放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米ABC,デジタル記者4人を国内に配置

ABCニュースは,デジタルジャーナリストと呼ばれる記者をアメリカ国内に4人新たに配置する。ブロードキャスティング&ケーブル誌が6月3日伝えた。彼らは,撮影,PC上での映像編集,原稿書き,リポートなどをすべて一人でこなし,ABCではこれまでインドや韓国,インドネシア,ブラジルなど世界各地に配置している。経費削減と取材の機動性を高めるという2つの狙いがある。米国内で新たに配置されるのは,首都ワシントン,デンバー,デトロイトで,ワシントンではオバマ政権や経済問題の取材のため2人をあてることにしている。

ネット上のビデオ視聴時間,49%増

6月11日のニールセン発表によると,米国内でインターネット上のビデオ視聴に費やす時間は今年5月で一人平均188分/月に上り,昨年5月に比べて 48.9%増えていることがわかった。ニールセンの担当者によると,テレビ番組や映画を無料で提供するHuluが急速に人気を高めた結果,これまで漠然と映像を検索していた利用形態から「目的を定めたビデオ視聴」にシフトしつつあることが時間数の増加に結びついたとしている。時間数の増加率49%に比べて,オンラインビデオの利用者数の増加は,昨年比13%に留まっている。

米大手SNS,大幅リストラを実施

米メディア企業大手ニューズコープ傘下で大手SNSサイトを運営するマイスペースは6月16日,要 員のおよそ3割にあたる約400人を削減すると発表した。アメリカではSNSサイト間の競争が激化し ており,ここ数年シェア1位を保ってきたマイスペースは,ライバルのフェイスブックに急激にシェアを 奪われ,4月の全世界でのユニークビジター数は,マイスペースの1億2,300人に対してフェイスブックは3億700人となっていた。そして本拠地のアメリカでも今年5月に初めてフェイスブックがマイスペースを追い抜いていた。

NY地域のローカル局,共同取材体制をスタート

NY地域のローカルテレビ局4社が6月22日からローカルニュースの共同取材体制をスタートさせた。加盟したのは,NBCの直営局WNBC,CBS直営局 WCBS,FOXの直営局WNYW,トリビューン社所有のWPIXの4局で,ABC直営局のWABCは参加を見送った。カメラマンは各局が持ち回りで担当して撮影を行い,加盟局がニュース番組などで使用する。アメリカのローカル局が不況と若年層のテレビ離れなどの影響で経営悪化に苦しむなか,経営効率化のためのこうした試みは注目を集めており,今後全米に広がる可能性もある。

米タイムワーナーとコムキャスト,独自のVODネットサービスの試験配信へ

米メディア企業大手のタイムワーナーとケーブルテレビ最大手のコムキャストは6月24日,加入者向けの番組ネット配信サービスを7月から試験運用すると発表した。「TV Everywhere」と名付けられた同サービスは,これまでネット提供されなかったケーブルテレビの番組をネットでも視聴できるようにするもので,試験サービスではコムキャストの加入者5,000人を対象に,タイムワーナー傘下のケーブルチャンネルであるTNTやTBSなどの番組を無料で視聴できるようにする。コムキャストは今回の実験で,特に利用者が加入者であることを認証する技術を検証する。

FCC新委員長にジェナコウスキー氏就任

米FCC(連邦通信委員会)の新しい委員長にジュリアス・ジェナコウスキーが議会上院で承認され,6月29日正式に就任した。ジェナコウスキー氏はオバマ大統領の大学院時代の友人で,かつてFCC委員長の法律顧問を務めたり,メディア企業を共同経営するなど,放送・通信分野に詳しい。オバマ政権はブロードバンドを積極的に活用して経済を活性化させることを提唱しており,ジェナコウスキー新委員長の手腕に期待がかかる。これにより,地上デジタル放送への移行を主導したコップス委員長代理は,通常の委員に戻る。