放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,メディア関連法の改正に労組がストで対抗

全国の放送,新聞,出版などのメディア産業関係者で作る全国言論労働組合(KBSは既に脱退)は,12月26日, 与党ハンナラ党が推進中の「7大メディア関連法改正」に反対し,無期限のストライキに突入した。今回の法改正には,これまでは基本的に禁止されてきた,新聞社や大企業の放送事業進出を認めるといった内容が含まれている。これに対して,労働組合などからは「親大企業」,「親資本」的な性格に再編しようとする政府の意図があるとして反発の声が挙がっている。ストライキにはMBCの労働組合員の大部分が参加した他,SBS,EBS,YTNなどの放送局の組合員が部分的に参加した。

香港,ATVの経営者が12日間で辞任

香港の地上テレビ局ATVで,2008年12月4日にCEOに就任したばかりの王維基(Wong Waikay)氏が,12日後に辞任するという異例の事態となった。ATVは長年TVBの後塵を拝し,1980年代からの累積赤字が50億香港ドル(約 600億円)に達するなど,経営再建が求められていた。そこで白羽の矢が立ったのは,香港の通信事業者City Telecomの会長を務める王維基氏だったが,王氏は就任早々,「ATVは香港人のためのテレビ局だ」と述べるなど,これまでのATVの親中派的なスタンスを変えるような動きを見せた。しかしATVの大株主には,人民解放軍の出身でフェニックステレビのオーナーである劉長楽氏や,中国系企業のCitic Pacificが含まれており,中国系企業の中にはATVへの広告を取りやめる動きも出ていた。今回の辞任劇は,ATVの経営再建が経済の論理だけでは動かせないことを示す形となった。

台湾,中国ラジオの2チャンネル返上へ

台湾で放送メディアを管轄する国家通信放送委員会(NCC)は2008年12月10日,中国ラジオ(中廣)が持っている台湾全土向けの5チャンネルのうち,もともと中国大陸からの宣伝放送対策として割りあてられ,その後別の目的に流用されていた「宝島網」と「音楽網」の2チャンネルを2009年中に返上させる方針を明らかにした。中国ラジオは国民党の一党支配の時代に独占的にチャンネル所有を認められた国民党系のラジオ局で,2000年の政権交代後,民進党政権が公平なチャンネル分配を要求していた。NCCは返上させたチャンネルを狭い区域に分割し47チャンネルの新規参入を認める方針である。

インド,NBAが報道の自主規制策を発表

11月26日にムンバイで発生した同時多発テロ事件の報道で,ニュース専門の商業衛星テレビの一部報道に「行き過ぎ」があったと厳しい批判を受けたことから,業界の自主監督組織であるNBA(News Broadcasters Association)は12月18日,加盟のテレビ局に対し非常事態発生時の生放送に制限を設けるガイドラインを発表した。ガイドラインにはテロリスト集団に見解表明の機会を与える生中継の禁止や人質の状況に関する詳細報道の禁止,被害者・保安要員・犯人側との直接接触の自粛などが含まれている。 NBAは,放送内容に対する苦情にはこうした自主規制で対処するとしているが,批判を強めている政府の姿勢が和らぐかは予断を許さない。インドでは近年ニュース専門チャンネルが急増し,報道の専門性を欠くチャンネルもあると指摘されている。

インド,放送実施中のTVチャンネルが450に

インド情報放送省が明らかにしたところによると,2008年末現在,インド国内で放送を実施しているTVチャンネルの総数は450に達した。このうち417は商業放送,残り33は公共放送のチャンネルである。

豪,公共番組専門のテレビ局誕生へ

オーストラリアで議会中継などを放送する公共番組専門のテレビ局が1月20日からスタートすることになった。アメリカで議会の生中継を放送しているC- SPANにならって「A-SPAN」と名づけられたこのテレビ局は,オーストラリアの大手衛星・ケーブルテレビ会社FoxtelとAustar, それに「Sky News」のオーストラリアン・ニュース・チャンネルの3社が共同で立ち上げる。