放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国,海外アニメの規制さらに強化へ

中国の国家ラジオ映画テレビ総局(SARFT)は2月14日,中国中央テレビや各省市自治区の放送行政部門などに対し,5月から海外アニメの放送禁止時間を延長するなど,一層の規制強化を行う通達を出した。中国では2006年8月以来,午後5時から8時までの時間帯における海外アニメの放送が禁止されていたが,今回の通達では禁止時間帯を午後9時まで1時間延長するとしている。また,国産アニメの比率は70%以上とするよう求めている。SARFTの今回の規制強化は,“未成年者の思想道徳建設のために優れた国産のアニメを提供し,中国のアニメ業界の発展に良好な環境をつくるため”とされている。これによって中国で人気の高い『ドラえもん』や『スラムダンク』などの作品の放送に影響が出るものとみられるが,関係者の間ではテレビの視聴率の低下や海賊版DVD への需要の移行を予測する声もある。

香港,RTHKのトップ人事が難航

香港の公共放送RTHK(香港電台)は,2007年7月に組織の長である廣播處長が「女性問題」で辞任したことから,その後任人事をめぐって特別行政区政府が公募を行った。しかし政府は応募者のなかから適切な人材が見つからなかったとして,応募の要件から「大学の学位取得」をはずして再公募することになった。これを受けてRTHKの番組司会者を務める周融(Robert Chou Yung)氏が2月25日,廣播處長のポストに応募する意向を表明,「大学の学位がないためこれまで差別を受けてきた」と述べた。RTHKをめぐっては,07年3月に公共放送検討委員会がRTHKとは別の公共放送を新規に設立するとした報告書を発表したことから,市民団体や立法会議員の間で「RTHK の言論の自由を封じようとするもの」との批判が噴出,今回の流れも「政府寄りの周氏を就任させるための出来レース」との見方が出ている。

韓国,MBC新社長は元ニュースキャスター

2月29日,MBCの新社長にオム・ギヨン(厳基永)氏が選任された。任期は3年。オム氏はMBCの看板ニュース番組『ニュースデスク』のアンカーを13 年以上にわたって務め,「国内最長寿アンカー」として知られた人物である。2月15日にMBCの大株主である財団法人放送文化振興会の理事会の投票で過半数を得て,社長に内定していた。

マレーシア,国内初の24時間ニュース開始

マレーシア国営ベルナマ通信のテレビ部門であるベルナマTVが2月28日,国内では初の24時間ニュースチャンネルを開始した。ニュースは大半がマレー語で放送され,一部は英語,中国語,タミル語が使用される。

インド,TRAIがFM放送への規制緩和を勧告

インドの商業放送の規制監督機関TRAI(インド電気通信規制庁)は2月22日,商業FM放送局に対するニュース報道禁止や外資制限などの規制を緩和するよう情報放送省に勧告した。勧告が受け容れられれば商業FM局も,公共放送All India RadioやDoordarshanが放送したニュース,或いは政府公認の通信社PTIやUNIが配信したニュースなどに限って報道が可能となる。また FDI(外資直接投資)の上限も,現行の20%から,ニュースを扱う局で26%,ニュースを扱わない局で49%まで引き上げられる可能性がある。こうした規制緩和は業界側が長年要求してきたことではあるが,安全保障上の理由などから政府部内には依然根強い慎重論もある。

パキスタン,PEMRA長官が交代

PEMRA(パキスタン電子メディア規制庁)の初代長官Iftikhar Rashid氏が任期満了で退任したのを受け,2月9日,経済・財政部門のベテラン官僚Mushtaq Ahmed Malik氏が新長官に就任した。PEMRAは,2002年3月,ムシャラフ大統領の下で設置され,商業テレビ・ラジオ・ケーブルテレビなどの許認可権,外国衛星テレビの国内放送許可権など幅広い権限を行使している。最近は政情不安を背景に,商業衛星テレビ(特にニュース専門チャンネル)に対して強硬な規制措置を取ったことなどからジャーナリスト団体や野党などから強い批判を浴びている。