放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

中国中央テレビ,地上デジタル本放送HDで開始

中国中央テレビ(CCTV)は2008年1月1日,地上デジタル本放送を北京でHDTVチャンネルとして開始した。CCTVは1999年の国慶節の式典の中継でHDによる地上デジタルの試験放送を開始したが,その後HDはケーブル有料チャンネルで推進する方針が決まったため,試験放送は05年9月で中断していた。しかし有料のHDチャンネルは普及が難航したことから,オリンピックを前に方針転換が図られたもので,今後北京市民はHD対応の受像機を新規に買うか,既存の受像機にHD対応のセットトップボックスを付ければ,地上デジタル放送が見られるようになる。

香港,地上デジタルテレビ放送開始

香港で2007年12月31日,TVBとATVが地上デジタル本放送を開始した。当初のカバー区域は香港島北部や九龍半島,沙田の一部など人口全体の 50%程度にとどまるが,北京オリンピックまでに75%まで広がる見通しである。今後08年の上半期中に,TVBが2チャンネル,ATVが4チャンネルでの地上デジタル放送を行うことにしている。

台湾,NCC組織法の一部修正案が立法院通過

台湾ではNCC=国家通信放送委員会の委員選出方法をめぐって与野党の対立が2年以上も続いてきたが,2007年12月20日,委員の候補者を行政院長(首相)が指名し,立法院(国会)が同意権を行使するなどとした妥協案で与野党が合意,NCC組織法の一部修正案が成立した。05年10月に野党多数の立法院は,NCC委員の選出方法について,各政党が議席数に応じて委員を選出する審査会のメンバーを推薦できるとしたNCC組織法を強行採決し成立させたが,与党が異議を申し立てた結果,司法院(最高裁)大法官会議は06年7月,NCC組織法第4条の一部の条文が行政権の侵害に当たり違憲との解釈を示していた。今回通過した修正案では,NCC委員の候補者は行政院長が指名し,立法院は同意権の行使にとどめるとともに,多すぎて効率が悪いとされていたNCC 委員の数を13人から7人に減らした。

北朝鮮向け「北韓改革放送」開局

韓国では12月24日,短波・インターネットラジオ放送局「北韓改革放送(www.nkreform.com)」が正式にサービスを開始した。この放送局は,北朝鮮の改革,開放の意義や方法などについて,北朝鮮の幹部,エリート,青年層を対象に伝えることを目的としている。設立者は社団法人北韓研究所の研究員で自身も脱北者のキム・スンチョル氏。放送は周波数9,630kHzで毎日午後9時から30分間となっている。

OBS京仁TV開局

OBS京仁TVが,12月28日から正式に放送を開始した。OBSの前身であるiTV(京仁放送)は,財政能力の不足などを理由に,放送委員会から放送の再許可推薦を拒否され,2004年末に放送を中断していた。OBSは今後HDによる番組制作に力を注ぐ方針で,京畿・仁川地域では地上放送で,ソウル地域ではケーブル放送での実施となる。

IPTV導入法案が国会を通過

韓国国会は,12月28日に本会議において,IPTVサービス導入を骨子とする「インターネットマルチメディア放送事業法案」を賛成154票,反対15票,棄権22票で通過させた。これにより,施行令の制定作業を経てIPTVサービスの実施が可能となった。

パキスタン,依然続くGeo Newsへの制裁措置

パキスタンでは,12月15日,非常事態宣言が解除されたが,それまでにケーブルテレビへの配信禁止が唯一解かれていなかったウルドゥー語の大手商業衛星テレビGeoのケーブルテレビ復帰は見送られた。Geoはアラブ首長国連邦のドバイを拠点にパキスタン本国と世界の他地域向けに4チャンネルで衛星放送を行っているが,11月3日の非常事態宣言の下でニュース報道番組を持つほかの商業衛星テレビ同様,国内ケーブルテレビへの配信が禁止された。その後他局は報道の自主規制を受け入れ配信可能になったが,Geoだけは自主規制を拒否し続けている。