放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

パキスタン,非常事態で商業TVの報道規制強化

パキスタンではムシャラフ大統領が軍最高司令官の地位を保持したまま再選されたことに批判が高まる中,11月3日,非常事態宣言が発布され,一部の例外を除きニュース報道を行っている衛星テレビのケーブルテレビへの配信が遮断された。また,パラボラアンテナやチューナーなど衛星テレビを直接視聴するのに必要な機材の販売も禁止された。BBC,CNN及び国内の商業衛星テレビAaj TV(ウルドゥー語チャンネル)とDawn News(英語の24時間ニュースチャンネル)については,11月15日,ケーブルテレビへの配信再開を許可されたが,アラブ首長国連邦ドバイから放送を行っているGeoとARYには許可が下りず,16日,両局は放送そのものの停止を余儀なくされた。GeoとARYはパキスタン国内で最もよく視聴されているウルドゥー語チャンネルだが,政府から商業放送各局に示された倫理行動基準に同意しなかったことが不許可の原因と言われている。その後,22日,ARY のニュース専門チャンネルARY One Worldは送信規制を解かれたが,Geoについては,25日現在も全てのチャンネルの送信規制が解かれていない。

韓国国会文化観光委,KBS受信料引き上げ案上程

韓国国会文化観光委員会は11月20日,全体会議を開き,KBS受信料を月2,500ウォン(約300円)から4,000ウォン(約480円)に引き上げる内容の「韓国放送公社テレビ放送受信料引き上げ承認案」を上程した。受信料引き上げ案は9月21日,放送委員会から文化観光委に回されたが,国会審査の可否をめぐって大統合民主新党(与党)とハンナラ党(野党)が2か月近く議論した後,この日の上程となった。しかし,定期国会(第269回)が23日終了するため,受信料引き上げ案は2008年2月の臨時国会で本格的に扱われる見通しである。

中国,台湾と共同制作のテレビドラマの規制緩和

中国の国家ラジオ映画テレビ総局は11月7日,中国と台湾が共同制作したテレビドラマについて,2008年1月からは許可を取れば中国制作のドラマと見なすという新しい政策を発表した。中国ではこれまで台湾のテレビドラマは諸外国の作品と同様輸入規制の対象となっていた。また中国の各地方で制作するテレビドラマに台湾の俳優が参加する場合の手続きも簡略化された。さらに現在は全国向けのチャンネルでは国内制作の作品に限られている夜7時から10時までの放送時間帯に,今後台湾との共同制作の作品が放送できる可能性にも触れており,台湾のテレビドラマ関係者は大いに歓迎している。一方台湾当局は,「中国の台湾に対する政策の多くは背後に政治目的があり,具体的な内容を慎重に検討したい」と話している。

インド,会議派がタミルナドゥでテレビ局開局

各政党の間でメディアを巻き込んだ激しい争いが展開されているインド南部の州タミルナドゥで,11月19日,連邦議会与党連合の中核「会議派」が運営する初めての24時間衛星チャンネルMega TVが本放送を開始した。タミルナドゥでは地元政界の実力者が運営するSun TV,州政界を2分する地方政党DMK(ドラヴィダ進歩同盟)と分派のAIADMKがそれぞれ運営するKalaignar TVとJaya TVなどが既に激しい主導権争いを演じており,そこに会議派のテレビ局が割り込んだ形となった。

インド,312衛星チャンネルが放送許可を取得

インド政府の発表によると,11月15日現在,国内から衛星に送信(アップリンク)し,それを国内で放送(ダウンリンク)することが認められた衛星テレビチャンネルは255,国外から衛星に送信されインド国内で放送が認められたチャンネルは57となり,インドのテレビ視聴者がケーブルテレビやDTH(直接受信)衛星放送でアクセスが可能なチャンネルは計312となった。国内から衛星への送信が認められた255チャンネルの内132チャンネル,国外から送信し国内での放送が認められた57チャンネルの内55チャンネルには,それぞれ外資が参加している。また国内から衛星への送信が認められた255チャンネルの内149チャンネルはニュース・報道番組を扱っている(専門チャンネルも多数ある)。