放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

米HDテレビの世帯普及率は13.7%

米ニールセンメディアリサーチは 10月 30日,全米の HD テレビの世帯普及率が 13.7%(1,550万世帯)だという調査結果を発表した。これは HD放送が受信可能なチューナーを保有している世帯の数である。エリア別ではロサンゼルスやワシントンD.C などで高くなっている。今回の数字は,HD テレビ保有世帯が3,600万世帯(07年 7月現在)に達しているとしたCEA(全米家電協会)等の発表と大きく食い違っている。CEA がチューナーの所有の有無にかかわらず「HD 対応型テレビ」を所有している世帯をカウントしているためで,HD 放送を受信可能な世帯が実際には伸び悩んでいることを示すものである。

FCC委員長,新聞・放送の兼営緩和を提案

米FCC(連邦通信委員会)のK・マーチン委員長は11月13日,32年間にわたって新聞と放送局の相 互所有を禁じたメディア所有規制を緩和する改革案を委員会に提出した。ケーブルや衛星,インター ネットなどメディア環境が激変したことを受けての動きで,実現すれば1社が1つの市場内で新聞と放送局(テレビまたはラジオ)を兼営できることになる。提案によると,対象となるのは国内の主要20都市で,取得できるのは市場内で5位以下の放送局,買収後も8つ以上のテレビ局あるいは新聞が残ることを条件としている。NYタイムズ紙上でマーチン委員長は「過去30年間で300以上の新聞が廃刊する中で,意見の多様性を守り,経営を安定させるために必要な措置だ」としている。一方,民主党系委員からは「主要20都市だけで国内全世帯の43%を占める。提案には抜け穴も多い」などの批判も出ており,大きな議論となっている。FCCは12月11日まで一般からの意見募集を行い,年内には委員会採決を行うものと見られている。

CNN,海外取材態勢を強化

米 CNN は11月14日,海外特派員の数を 10%増海外の動きやして取材力を強化することを明らかにした。視聴者のテレビニュース離れが進み,インターネットへの依存が強まる中,CNN では記事や映像を通信社に頼らず,独自の取材網を強化することに力を入れている。計画では約1,000万ドルを投じて現在150人の特派員をさらに15人程度増やす。対象となるのはアラブ首長国連邦,ヨハネスブルグ,メキシコシティの支局拡大で,さらにアフガニスタン,ケニア,マレーシア,ポーランド,ベトナムなどでの取材活動も計画している。CNNインターナショナルのT・マドックス上級副社長は「提供するコンテンツを独自に確保することは,事業の重要なバックボーンだ」と語っている。

米PBSの「The War」が高視聴率

公 共 放 送PBSは11月20日, 今 年9月 か ら10月にかけて放送したシリーズドキュメンタリー「The War」が過去10年で最高の世帯視聴率4.7%を記録,延べ3,780万人の視聴者に到達したと発表した。このドキュメンタリーは著名なドキュメンタリー監督のケン・バーンズ氏とリン・ノヴィック氏が第二次大戦中の市民生活をテーマに6年をかけて制作した15時間に及ぶシリーズである。再放送も10月から11月にかけて行われ,再放送でも1.3%の視聴率を獲得。放送後の反響も大きく,番組DVD がこれまでに20万部売れているほか,PBSの関連サイトへのアクセスが485万ページビューを記録している。

米ABC,選挙報道でSNSと協力協定

米ABC と大手SNSの「フェイスブック」は11月26日,来年の大統領選挙に向けた報道で協力する協定を結んだと発表した。候補者のテレビ討論会の共催のほか,政治報道においても協力しあう。これによりフェイスブックの利用者は,ABC の記者の動向を追ったり,記事やリポートの閲覧・ネット上での視聴ができたりするほか,世論調査や公開討論へのオンライン参加等も可能となる。フェイスブックは世界に8,000万人近いユーザーを抱える急成長中のSNSで,今回の協力関係は,従来型の報道メディアとネットメディアによる本格的な融合サービスとして注目を集めている。