放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

韓国,KTがIPTV開始を決定

韓国通信最大手のKT は3月28日,ケーブルテレビなど放送業界が反発する中,IPTV 事業を開始すると発表した。ただし,放送界の反発などにより政府の許可が下りていない「同時放送」については除外する予定である。KT のIPTV 事業を統括しているイ・ヨンヒメディア本部長によると,「規制のため同時放送は難しいが,今年上半期中に同時放送を除いた状態であってもIPTV サービスを始める計画」とのことで,KT としてはVODと双方向サービスによるIPTV を始める方針である。これについて情報通信部は,同時放送を除外したサービスは付加通信事業に該当するため,法的には問題がないとの見解を取っている。

香港の行政長官選挙で初のテレビ討論

香港の行政長官選挙に立候補した現職のドナルド・ツァン(曾蔭権)氏と,公民党のアラン・リョン(梁家傑)氏によるテレビ討論が3月1日と15日に行われた。香港の行政長官選挙は直接選挙ではなく,投票を行う800人の選挙委員会メンバーは中国政府から任命され,大多数がツァン氏を支持している。このためテレビ討論は選挙結果に直接影響を与えるものではなかったが,香港の行政長官選挙では初めてのテレビ討論を行い,リョン氏が長官直接選挙を求める論陣を張ったことは,民主化推進への一歩と評価する声もある。

台湾テレビ会長,「株買い集め」で解任

民営化に伴う政府系株の売り出しが予定されている台湾テレビで,続投を目指していた頼国洲会長がひそかに自社株を買い集めていたとして,行政院財政部は3 月20日,頼氏を解任した。台湾テレビは株式全体の半数近くを政府系の銀行が所有しており,民営化のため政府系株のおよそ半数を公開入札にかけ,残りを一般市民に対して売り出すことが決まっている。頼会長は台湾テレビの一部株式を所有している日本企業に対して,ひそかにその株式を自分が作った会社に譲渡するようもちかけていたということで,行政院では公有資産を管理する立場にふさわしくない行為だとして解任を決めた。これに対して頼氏は,行政院が日本企業に対し,与党系の新聞社に株を売るよう圧力をかけたとして強く反発している。頼氏は李登輝前総統の娘婿であることから,解任劇の背景には陳水扁総統と李登輝前総統の確執があるとの見方も出ている。

バングラデシュ,7商業テレビ局に放送停止命令

バングラデシュで軍の支持を背景に政治浄化の施策を進めている選挙管理内閣は,3月15日,「1996年事業規則(Business Rule)」の付則1により必須とされている情報省の認可を得ず放送を行っているとしてSTV US,Channel S,Rupashi Bangla,Falguni Music,TV-5,Bijoy TV,My TV の7局に対し即時放送停止を命じた。バングラデシュでは,上記の事例以外にも放送局の認可をめぐっては様々な問題が指摘されている。例えば,先のカレダ・ジア(BNP 総裁)政権時代,ntv,rtv,Channel 1,Bangla Vision,Boishakhi TV など同政権と深い関わりを持つ局だけが異例のスピードで免許を取得し,疑惑と批判にさらされている。

インド,INSAT- 4B衛星打ち上げに成功

DTH(直接受信)衛星放送などテレビ・通信サービス用トランスポンダー24基を搭載したISRO(インド宇宙研究機構)の第4世代衛星INSAT- 4Bが,当初の予定より1日遅い3月12日,成功裏に打ち上げられた。24基のうち12基はDTH衛星放送に使われる高出力Kuバンド用のもので,有料の DTH衛星放送事業へ新規参入を計画しているインド南部の大手放送事業者Sun TVと,既に無料のDTH衛星放送を行っている公共テレビDD(Doordarshan)などがすべて予約している。Sun TVのDTHプラットフォームSun Directは,去年のINSAT- 4C打ち上げ失敗で出鼻をくじかれたが,INSAT- 4Bに乗ることでDish TV(Zee系列)とTata Sky(STARとTataの合弁)に続く有料のDTH衛星放送事業参入を目指している。DDのDTHプラットフォームDD Direct+は外国衛星(NSS-6)を使用してきたが,国産衛星に乗り移ることで経費の削減と提供チャンネルの増加を目指している。