放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

クロスメディア規制撤廃か,豪メディア改革法案

オーストラリアのクーナン通信相は7月14日,先に閣議決定されたメディア規制関連法の改革案を発表した。改革の骨子は,地上テレビへの外国資本出資を制限する外資規制法の緩和と,地上テレビと新聞の同時保有を禁止するクロスメディア法廃止である。これに対し,野党は「クロスメディア法撤廃は,一握りの資本家によるメディア独占を招きかねず,外資規制緩和は国のアイデンティティーを損なう」と法案通過阻止を表明,ニューズ社や地上テレビのチャンネル7も,それぞれの立場で反対を表明した。改革法案にはこの他,地上デジタル放送完全移行時期の見直しや,公共放送のデジタル専用チャンネルの番組ジャンル規制解除なども含まれている。

インド,再検討を迫られた「放送法案」

インド政府は,7月24日から始まった国会の会期冒頭で「2006年放送サービス規制法案(通称「放送法案」)」提出を計画していたが,業界団体などの強い反対で提出を当面見送った。法案はクロスメディア所有を厳しく規制するなど全体的に業界規制色の強い法案で,業界団体などから強い反発が出ていた。所管の情報放送相は,業界との話し合いで法案内容の修正もありうる,法案の提出時期については言えないとしている。インドには包括的な放送法が無く,これまでにも法案が国会に提出されているが成立したことがない。

インド,残る3つの大都市圏でも来年からCAS実施へ

インド政府はデリー高等裁判所の実施命令判決を受け,7月30日,デリー,ムンバイ,コルカタでもCAS(Conditional Access System, 限定受信システム)の年内導入を命じる告示を発布した。インドでは,有料チャンネルの急増でケーブルテレビの視聴料金が高騰したためケーブルテレビでの有料チャンネル視聴にCAS導入が決まり,先ず4大都市圏で2003年7月導入が告示された。しかし事業者間の利害対立や政争,準備不足などで大混乱し,チェンナイ以外での実施は見送られていた。そのため実施に備え設備投資をしたMSOらが残る大都市圏での実施を求め裁判に訴えていた。

インド,通信衛星INSAT-4Cの打ち上げ失敗

インド宇宙研究機構(ISRO)は,7月10日,国内の宇宙センターから通信衛星INSAT-4Cを打ち上げたが失敗した。この衛星には,南インドの大手メディア企業Sun TVがDTH(直接受信)の衛星放送Sun Direct開始のために予約したKuバンドのトランスポンダーなどが搭載されていた。この事故で,Sun TVのDTH プロジェクトは少なからぬ影響を受けそうである。

韓国,第3期放送委員会発足

韓国で,7月12日,第2期放送委員会が解散し,大統領から任命された9人の新たな委員が発表された。14日には第3期放送委員会の初会合が開かれ,互選の結果,委員長にイ・サンヒ放送文化振興会理事長,副委員長に民主言論市民連合のチェ・ミンヒ常任代表が選ばれた。放送委員は,大統領と国会議長及び(国会の)文化観光委員会からそれぞれ3名推薦され,大統領により任命される。任期は3年。今回任命された一部の委員については,放送委員会事務局労組などが,資質や政治的独立性に疑義があるとし強く反対している。

香港,PCCW株の一部は香港の財界人に譲渡へ

有料放送のNOW Broadband TV を傘下に持つ香港の通信最大手PCCWは7月10日,オーストラリアの投資銀行やアメリカの投資ファンドと行っていた身売り交渉を撤回し,リチャード・リー(李澤楷)氏が株の75%を所有するPacific Century Regional Developments(PCRD)の持つPCCW株22.66%を元シティグループアジア投資銀行部門経営者のFrancis Leung Pak-to(梁伯韜)氏に1株6香港ドル(約90円)で譲渡することを決めた。PCCWには中国の通信大手「中国網通」(China Netcom)が約20%出資しており,中国政府の意向を受けていると見られる中国網通は,PCCWが外資に身売りすることに反対していた。今回の決定は,PCCWを経営するリチャード・リー氏が中国側の反対に配慮したものと見られているが,一般の株主には不満も出ている。