放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

香港,公共放送RTHKの将来に関する検討委員会設置

香港のドナルド・ツァン(曾蔭権)行政長官は1月17日,RTHKを含む香港の公共サービス放送の将来について検討する委員会をつくり,7人の委員を任命した。委員の内訳は,商業放送のTVBの元ニュース局長が委員長を務めるのをはじめ,新聞社の経営者や編集長,学者,ケーブルテレビ局の元幹部などで, RTHKの関係者は含まれていない。検討委員会では海外の公共放送の実態を調査し,業界や一般市民の意見を聞いた上で,公共放送の組織・財務・番組編成・一般市民への説明責任などについて検討し,9か月以内に勧告を出すことになっている。RTHKはラジオ7チャンネルの放送に加え一部テレビ番組も制作している公共放送だが,組織的には香港特別行政区当局の一部で,年間4億香港ドル(約60億円)の予算を配分されている。このため親中派からは「政府の一部なのに政府に批判的」と攻撃を受ける一方,民主派からは「当局の意向に配慮して自主規制をしている」と批判されるなど,微妙な立場にあるが,委員長は RTHKの編集権の独立を支持すると表明している。

国営RTM,9月から地デジ試験放送開始

マレーシアの国営放送RTMが,9月から地上デジタル放送の試験放送を開始することになっ た。RTM を管轄する情報省が1月24日に発表した。RTMは試験放送のために,同局で3つめのチャンネルを立ち上げ,当初は首都圏を対象に放送を行う。また,情報省は首都圏の2,000世帯に対して,デジタル受信用のセット・トップ・ボックスを無料で提供する。同国では,2015年までにすべての放送をデジタル化する計画だが,RTM の試験放送のあと,何年から本放送に踏み切るかはまだ決定していない。

中韓,地上波DMB促進で進む協力関係

昨年12月,世界に先立ち携帯電話などの移動体向け地上波デジタル・マルチメディア放送(DMB)を開始した韓国と,同サービスの開始に向け準備を進めている中国との協力関係が進んでいる。韓国の情報通信部は,1月19日,北京で中国の国家ラジオ映画テレビ総局と,中国での地上波 DMBサービス促進支援のため定例会議を持つことで合意した。また20日には,韓国の電子通信研究院が,北京で韓国型の地上波DMBを4月から開始する予定の北京悦龍DMB社(北京人民ラジオ局の子会社)と地上波DMBの促進協力で覚書を交換した。1月8日には韓国のサムスン電子が,北京悦龍DMB社と地上波DMBが視聴可能な携帯電話20万台を輸出することで合意したと発表している。サムスン電子は,広東省の広東粤広DMB社とも地上波DMB視聴用の携帯電話を年内に 30万台輸出する契約を交わしている。

インド,大型英語ニュース専門チャンネル誕生

インドではヒンディー語や英語,その他の地域言語によるニュース専門の24時間衛星チャンネルが次々と誕生しているが,1月31日,今度はインド最大(発行部数では世界最大)の英字紙The Times of Indiaを発行するTimes of Indiaグループとロイター通信社の合弁Times Global Broadcasting社が,インド向けの24時間英語ニュースチャンネル Times Nowの本放送を開始した。英語ニュース専門チャンネルには,NDTV24×7やCNBC TV18,Headlines Today,CNN-IBNなどの先行チャンネルがあり激しいシェア争いが予想される。

韓国,見送られたiTVの新規事業者選定

放送委員会は,2005年1月以降地上テレビ放送を停止しているiTVの新規事業者選定を行っていたが,1月23日,申請を出していた5事業者は全て審査基準(650点以上)に達していないとして許可推薦を見送った。最高の評価を得たのはCBS中心のコンソーシアムGooD TVだが, 640.65点と基準点に達しなかった。韓国では放送委員会の許可推薦に基づき情報通信部が放送免許を交付している。iTVはどのネットワークにも属さない唯一の地域民放で,仁川と京畿道南部を放送区域としていたが,放送委員会が,財務能力の不足などを理由に免許の再許可推薦を拒否したため,2004年 12月31日の放送を最後に廃業に追い込まれた。放送委員会が新規事業者の選定を見送ったことで,iTV の再興は先送りとなった。