放送研究と調査(月報) - 目次

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

放送界の動き

05.06.01米最高裁,メディア所有新規則について上告棄却

米最高裁は6月13日,フィラデルフィア控訴裁が 2004年6月にFCC(連邦通信委員会)に差し戻したメディアの新所有規則について,この判決を不服としていた放送事業者らの上告を棄却した。

FCC が2003年6月に発表したメディア新所有規則は,1社が全国で所有できるテレビ局の視聴世帯到達率の上限を 35%から45%に引き上げる,1社が1市場で所有できるテレビ局を最大2局から 3局に引き上げる,1975年以来禁止していた放送局と新聞の相互所有を認める,などの規制緩和策であった。これに対し,メディア集中が加速することを懸念する市民団体や,逆に規制緩和が不十分だとする放送・新聞事業者などが訴訟を起こした。ネットワークの力の増大を懸念した連邦議会は2004年1月,視聴世帯到達率の上限を45%から39%に引き下げて,法律とした。残る新規則について,フィラデルフィア控訴裁は,算定根拠が不十分だとしてFCCに差し戻し,FCCは2005年1月上告を断念したが,放送事業者や新聞事業者は,経営効率化が遅れるとして控訴裁判決に対して上告していた。ケビン・マーティン新委員長のもとで,FCCは改めて新しいメディア所有規則の策定に取り組むことになる。

05.06.01PBSが米テレビ局では初のオンブズマン設置

PBS は,6月14日,アメリカのテレビ放送局としては初めてオンブズマンのポストを設置すると発表した。オンブズマンは,PBSの番組に寄せられる視聴者からの苦情等について調査を実施し,結果を PBS会長に報告する。PBSのパット・ミッチェル会長は「我々の目的は視聴者の意見を聴く公的な道を開くことである。オンブズマンは完全に第三者の立場に立って調査を行う」と述べている。各地のPBS局に政府交付金を配分するCPB は今年4月にオンブズマンを任命,また全米公共ラジオ(NPR)はすでに2000年からオンブズマンを任命している。

05.06.01米CPBが新会長を任命

CPB (公共放送機構)の理事会は,6月23日,CPB の新会長にパトリシア・ハリソン氏を任命した。ハリソン氏は2001年から国務省で教育・文化担当の国務次官補を務めていた。任命に当たってCPB理事会は「CPBは公共放送推進運動の先頭に立つ必要がある。ハリソン氏がその重要な任務を遂行できるよう後押ししていく」と表明した。ハリソン氏は全米共和党委員会の委員長を務めたこともあり,超党派候補の任命を訴えていたPBS会長や民主党議員らが反対していた。PBS のパット・ミッチェル会長は,「CPBトップはその運営において超党派でなければならない」として不満と懸念を表明している。

05.06.01米下院が公共放送への連邦政府交付金額を回復

下院本会議は6月23日,2006会計年度のCPB(公共放送機構)への連邦政府交付金を1億ドル削減する案について,削減をせず当初予算額に回復することを可決した。下院歳出委員会はさきに4億ドルの交付金予算のうち1億ドルの削減を可決していたが,これに対してPBSなどが反対して,ロビー活動を行うとともに,看板番組のひとつ『セサミストリート』などのキャラクター達によるワシントンでのデモ行進なども行っていた。本会議では多数派の共和党議員の一部が削減反対に回った結果,当初予算額の回復が可決された。

05.06.01コムキャストが大規模なVODサービス開始へ

米ケーブル最大手のコムキャストは,6月28日,同社のデジタルサービス契約者がVOD(ビデオオンデマンド)で視聴できる映画タイトルを一挙に 6倍に増やし,年1,500本規模のサービスを始めると発表した。これは有料映画チャンネル大手の Starz Entertainmentとの協定によるもので,全米最大規模のものになる。同サービスでは月250本の旧作映画を無料で,またStarzの有料チャンネルに加入すれば月75本の新作映画を,それぞれVODで視聴することができる。アメリカのケーブル業界は,VODサービスを契約者増加が著しい衛星放送に対抗する有力な武器として位置づけている。