冷戦時代のプロパガンダの内情

~旧東ドイツ・RBIの調査から~

公開:2024年2月1日

ウクライナへの軍事侵攻、イスラエルとパレスチナの衝突で改めて偽情報やプロパガンダに注目が集まる。現状を分析する上で、歴史を振り返ることは欠かせない。冷戦時代、東西両陣営はどのように有利な情報を流していたのか?ベルリンの壁によって分断されていた旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)でも、西側を含めた世界に向けてプロパガンダが行われていた。
冷戦終結から30年以上を経て、当時を知る関係者は少なくなりつつある。
今回の調査では、東ドイツの国際放送を担っていた「RBI=ラジオ・ベルリン・インターナショナル」に在籍していた実務の担当者6人から当時の内情を聞き取った。
聞き取りからは、▼RBIの基本方針が、ドイツ社会主義統一党の中央委員会の政治局が決定していたこと、▼4週間に1度のペースで、党の国際問題担当の責任者と打合せをしていたこと、▼中央の編集部が国の外交政策に関する特定のテーマについて文書を作成し、各外国語の翻訳の基礎にしていたことなどが判明した。
各担当者は、プロパガンダへの考え方、自身の関与についての認識がそれぞれ異なっていた。放送を出していたのは、東ドイツが海外各国からの外交的承認を得るのが目的だったと、全員が証言した。プロパガンダを行っていたと認める担当者がいる一方で、「不都合な面を伝えなかっただけで、うそはついていないし、今のような偽情報を流していない」などと証言する担当者もいて、当時の内情の一端が明らかになった。

メディア研究部 塩﨑隆敏

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