BBCの視聴者対応

~苦情を紹介する番組『Newswatch』とBBCの説明責任~

公開:2017年2月1日

BBCの視聴者への向き合い方を象徴する番組がある。毎週金曜日夜9時半(再放送土曜日朝7時45分)から放送される『Newswatch』で、BBCニュースに対する視聴者の苦情をもとに制作される15分間の番組だ。その週に寄せられた主な苦情を紹介し、BBCの担当者が説明し、時に反論する。

この番組は2004年、イラク戦争をきっかけに始まった。当時ブレア首相が開戦の理由として上げた「サダム・フセインは45分以内に大量破壊兵器を配備できる」との主張について、BBCの記者がラジオ番組で「誇張(Sexed up)されていた」とコメントした。これに対しブレア首相が反発し、BBCに訂正を求める中、情報源とみられた科学者が自殺。その後BBCの会長と経営委員長が辞任に追い込まれた。失墜したBBCニュースの信頼を取り戻すために、報道内容について説明責任を果たす目的で始まったのが『Newswatch』である。

またBBCは、イラク戦争を機に三段階の苦情処理システムを再整理した。苦情受付の第一段階として、視聴者サービス班に窓口が一元化された。BBCに寄せられる意見、問い合わせ、苦情などは年100万件以上に上り、そのうち約26万件が苦情だという。視聴者サービス班からの回答に納得できない場合は第2段階に申し立てることができる。そこでは「苦情対応ユニット」が独立した公平な調査を行う。それでも不満があれば、第3段階として、監督機関のBBCトラストに訴えることができる。

担当者への聞き取りから、BBCが苦情に誠実に向き合い、視聴者への説明責任を果たそうとしていることがうかがえた。

メディア研究部 田中孝宜

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