現地調査報告

BBC の「EU国民投票」報道

~公平な報道のためのガイドラインと職員研修~

公開:2016年10月1日

イギリスでは「EUに残留か離脱か」を問う国民投票が2016年6月23日に行われ、イギリス国民はEUから離脱する道を選択した。国論を二分した国民投票に公共放送BBCはどう臨んだのか、現地調査を行った。イギリスでは新聞は残留支持か離脱支持かを社説で明確に打ち出すが、放送は不偏不党(Impartial)が義務づけられている。公平性を守るよう厳しい目が向けられる中で、BBCでは準備段階から実際の放送に至まで、公平性を徹底するよう務めた。まず、6000人の報道職員全員にEUについてのオンライン研修を義務づけた。研修教材は、元ブリュッセル支局長が中心になり、現場の記者も全面的に協力して作られた。また国民投票ガイドラインを作成し、その中で具体的な放送現場で想定される事例をふまえて、どう不偏不党を維持すべきなのか規範を示した。その中で「幅広いバランス」を求めることや世論調査・出口調査を行わないとなどが明記された。BBCでは、国民投票をめぐる事前の報道や大ディベートなどの討論番組、カントリーファイルなどの一般番組にいたるまで、公平性は維持されたと自らの報道を評価している。一方で、そうしたBBCの報道に「公平すぎる」という批判も起こった。BBCが公平性にこだわることでかえって人々の理解が深まらなかったという意見である。これに対してBBCでは、公共放送の役割は、市民が判断するための材料を提供することであり、意見を表明したり世論を誘導したりすることではないと反論する。

メディア研究部 田中孝宜

※NHKサイトを離れます

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