シリーズ 公共放送インタビュー PartⅡ

【第5回】韓国
「緊急報道・速報至上主義より確実な情報発信を」

~ソンムン大学・イ・ヨン教授に聞く~

公開:2016年2月1日

日本に比べて地震が少ないこともあり、これまで韓国のメディアにとって緊急報道と言えば、自然災害よりもむしろ人災に起因して発生する大事故への対応を指していた。韓国における緊急時の災害・災難報道研究の第一人者、ソンムン(鮮文)大学のイ・ヨン(李錬)教授に、韓国のメディアが抱える緊急報道時の問題点を聞いた。

韓国では1995年に500人以上の死者を出す百貨店崩壊事故が発生したほか、2014年にも死者・行方不明者あわせて300人を超える旅客船沈没事故が起きている。これら国家規模の事件・事故発生時の対応でメディア各社は「速報性」を焦るあまり、失態を繰り返してきた。旅客船沈没事故発生の際には、修学旅行中の高校生たちが「全員救助された」との噂を確認せずに速報し、救助当局の初動体制に悪影響を与えたと言われている。また、あるテレビ局は高校生にインタビューをして、友だちが亡くなったことを伝えて衝撃を受ける場面を放送し、国民から大批判を浴びた。

イ教授は、韓国のメディア、なかでも受信料が使われている公共放送KBSは、受信料とともに広告料も主要な財源になっているため、どうしても視聴率を気にしてしまうが、その点は公共放送として自制すべきであると指摘する。また、公共放送としての存在意義を高めるためにも災害報道は迅速・正確に伝えるべきで、予算がどうしても足りないのであれば、1981年以降、凍結されている受信料の引き上げも考慮すべきであると語る。

メディア研究部 田中則広

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