中学校ではアオハルしてね─

公開:2023年11月1日

今年3月,息子が小学校を卒業した。卒業式で,同級生の女の子に「中学校で何したいの?」と聞くと「アオハルしたい!」と満面の笑みで答えてくれた。赤いはかまにマスク姿の少女は,青空の下,中学生活に夢を膨らませていた。

アオハル。「青春」を訓読みしてカタカナで表記した,若い世代を中心に流行していることばだ。ドラマや漫画,曲名にも用いられ,「アオハル祭」なる文化祭も各地で開かれている。いつの時代も,若者は斬新な造語の使い手だと再認識する。

『日本国語大辞典』によると,古代中国の五行説で,青が春の色であることから,人生の春にたとえられる若い時代が「青春」と呼ばれるようになった。

しかし,その「青春」は,もはや若い世代だけのものではないようだ。鉄道会社の青春切符は多くの高齢者が買い求めるし,「第二の青春」を謳歌しようという趣旨のコピーを掲げた中高年向けのバレエ教室やコーラス教室なども人気だ。『三省堂国語辞典』は,2022年発行の第8版で,「若い時期。また,その時期の(ような)楽しい日々。」と語釈に下線部の説明を付け加えた。実際の年齢は関係ない。94歳まで生きた松下幸之助が「青春とは心の若さである」と残したように,希望にあふれて新たな活動を続けるかぎり,青春は続くようだ。

「青春」を全世代が謳歌するようになった今,「青春は自分たちのものだ!」と言わんばかりに若い世代で浸透した「アオハル」。考えてみると,人生において,自分が「今こそ青春」と意識して過ごした記憶はない。むしろことば自体に,気恥ずかしさすら覚えていた。「アオハルな出来事」をSNSで報告しあう世代は,どこか自分たちを客観視することに長けていると思う。

コロナ禍で,多くの学校では,長い間,修学旅行や運動会など“青春の象徴”ともいえる行事の中止,縮小が相次いだ。給食時の会話すら憧れの風景。本当によく頑張ったと思う。失った日々を取り戻したいと気持ちを爆発させた結果が「アオハルしたい!」なのかもしれない。

夏を経て,久しぶりに会った冒頭の少女は,テニス部に入り,日焼けをしていた。この先も,中学校では憧れを実現し,大いに「アオハル」してほしい。そして,これまでにやり残したことのある大人の私たちも,大いに「青春」してみよう。

メディア研究部・用語 藤井まどか

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