「すごく」と「すごい」

公開:2023年10月1日

Q
出演者が景色を見て「すごいきれい」と言っているシーンで、そのまま「すごいきれい」とテロップ表示してもよいか、それとも「すごくきれい」と表示するほうがよいだろうか。
A

出演者の発言どおり「すごいきれい」と表示する場合、「すごくきれい」と表示する場合、どちらもありえます。

「すごい」は形容詞なので、その後の形容詞・形容動詞(今回の場合は「きれいだ」)に続く活用としては、「すごく」が伝統的な形と言えます。しかし「すごい+形容詞・形容動詞」もやや俗な表現、あるいは話しことばとして使われるようになっています。

出演者の「すごいきれい」という発言をテロップで「すごくきれい」と書き換えると、文法にかなった伝統的な表記と受け止める人もいる一方、とっさに出た「すごい」の感動を薄めたように感じる人もいるかもしれません。どちらにも一長一短があり一律に対応を決めることは難しいため、番組の意図、演出などをふまえたうえで総合的に判断する必要があります。

【解説】

○「すごい速い」と言う人が増

「すごい+形容詞・形容動詞」がある程度使われている実態を示すデータがあります。文化庁国語課の「国語に関する世論調査」では、「あの人は走るのがすごく速い」ということを、「あの人は走るのがすごい速い」と言うことがあるかについて質問しています。結果は、2021年度(令和3年度)には59%の人が「すごい速い」を使うと答えています。さらに過去の結果と比較すると「すごい速い」を使う人は増加傾向にあることがわかります。

また、複数の辞書を確認したところ、例えば、『明鏡国語辞典 第三版』では“話し言葉では、「すごい」を「すごく」と同じように連用修飾に使うことが多いが、本来は誤り”としています。一方、『三省堂国語辞典 第八版』では“連用形「すごく」は、俗に「すごい」の形で「すごい 速い・すごい びびってる」のように言う。関西方言で昔から「えらく おもしろい」を「えらい おもしろい」と言うなど、全国の方言に似た現象がある”としています。記述のしかたは辞書により異なるものの、いずれも話しことばや若い世代に好んで使われる表現として「すごい+形容詞・形容動詞」の用例を記載していました。

以上で見てきたように、口語としては「すごい+形容詞・形容動詞」を使う人が増えてきており、多くの辞書でも用例として認めています。

○放送では使う場面を考えて

とはいえ「すごい+形容詞・形容動詞」が使われるのはあくまでも俗語あるいは話しことばにおいてです。ある程度伝統的なことばづかいを求められる放送においては、テロップでの表記を含め、使う場面を考える必要があります。特にオフィシャルな立場で語る場合は「すごい+形容詞・形容動詞」を使うことには慎重であった方がいいでしょう。

なお、今回は話しことばとして「すごい+形容詞・形容動詞」を取り上げましたが、「すごい演技」「すごい味」など、「すごい+名詞」は、文法上全く問題ないことを付け加えておきます。

関連資料
放送用語委員会(札幌)「すっごい重たい」は、字幕では直す?(『放送研究と調査』2017年2月)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/pdf/20170301_2.pdf

メディア研究部・用語 高橋浩一郎

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