「8日以降に手続き」は,8日を含む? 含まない?

公開:2022年11月1日

Q
「『8日以降に』手続きをしてください」と言った場合、手続きをしてよいのは、「8日から」でしょうか、「9日から」でしょうか。
A
厳密に言う場合には「8日から」が正しい解釈なのですが、日常のことばとしては「9日から」だと受け止める人もいるので、「以降」を使う場合には誤解が生じないように注意が必要です。

まず、「以降」に似たことばで「以上」、そして「以下」がありますが、これについて考えてみます。

算数や数学では、「以上」や「以下」は「その数字も含む」ということで定義されているのはよくご存じのことと思います。「5以上の数」「5以下の数」と言ったら、それぞれ、「5」を含みますよね。

一方、「含まない」ことを表すことばとしては、「未満」があります。「5以下の数」と言うと「5」も含みますが、「5未満の数」だと「5」は含みません。このように、「以下」と「未満」は、「その数を含むか含まないか」ということで、対応しています。例えば、「18歳以下は無料です」と書いてあったとしたら、「18歳」の人は無料です。ですが「18歳未満は無料です」だと、すでに18歳になっている人、つまり満18歳の人は無料ではありません。

「18歳」を…
「18歳以下」 含む
「18歳未満」 含まない

では、「以上」に対応することばについてはどうでしょうか。「以上」は「その数を含む」ですが、これに対して「含まない」ことを表すことばは、「二字漢語(漢字2字からなることば)」では存在しません。あえて正確に言おうとすると、「18歳を超えた」「18歳よりも上」とか、「18歳超(ちょう)」などといった言い方をしないとなりません。

「18歳」を…
「18歳以上」 含む
「18歳を超えた」など 含まない

「18歳以上は有料です」だと、「18歳」の人はお金を支払わなければなりません。一方、「18歳よりも上の学生は、有料です」となっていたとしたら、「18歳」の人は支払う必要はありませんね。

では次に、日常のことばとして、
「これ以上やったら、許さないぞ」
という言い方について考えてみましょう。

算数や数学では、「以上」というのは「(それを)含む」ということになっていましたよね。では、この言い方では「これ」が「含まれる」わけですから、現時点〔=「これ」〕ですでに「許さないぞ」の領域に入ってしまっていることになりはしないでしょうか。くどい言い方をすると、正式には、
「これを超える行為をやったら、許さないぞ」
と言わなければならない、ということになってしまいそうです。しかし、そんなことはありませんよね。

実は、算数や数学では「『以上』や『以下』は、その数字・そのものを、『含む』」と定義していますが、日常のことばでは、そのような厳密な定義にしばられない使い方が多いのです。日常のことばでは、「以上」を「(を)超える」の意味で(も)使うことがきわめて普通です。

「これ」を…
「これ以上やったら」(日常のことば) 含まない

今回の「8日以降」も、この「以上」と通じるところがあります。厳密な言い方の場合には「8日」を「含む」のですが、日常のことばとしては「含まない」と考える人も決して少なくはないのです。

「『8日以降に』手続きをしてください」という例文でアンケートをおこなったところ、「手続きをしてよいのは『8日から』だ」〔=8日を「含む」〕という人が7割程度であったのに対して、「手続きをしてよいのは『9日から』だ」〔=8日を「含まない」〕という回答も2割程度ありました。また年代差があり、「含む」という回答は30代がもっとも多く、そして20代と70歳以上では少なくなっています。

場合によっては、「7日までは手続きができないので、8日以降に手続きをしてください」のように丁寧に言うようにすると、誤解を避けることができます。

このコーナーの担当者にはよく「原稿は8日以降に提出できそうです」と伝えて、早ければ8日に提出できるような期待を持たせる、というのはここだけの秘密の作戦なので、内緒にしておいてください。

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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