「食べ終わる」と「食べ終える」違い・使い分けは?

公開:2022年7月1日

Q
カレーを「食べ終わる」と「食べ終える」は、どちらがよいのでしょうか。
A
どちらでもかまいません。

<解説>

まず、「終わる・終える」という単独の動詞について見てみましょう。

「発表が 終わる」[自動詞] ~ 「発表を 終える」[他動詞]

この動詞のペアは、自動詞と他動詞の関係にあります。ただし、実際に使う上で、この2つの動詞が「対等」なのかというと、どうもそうではなさそうなのです。

「終える」については、たとえば小説の「地の文」などで

「私は、無事に発表を終えた」[他動詞]

と書いてあってもまったく自然ですよね。ところが不思議なことなのですが、日常会話で同じように「終える」を使って

「これで、発表を終えます」[他動詞]

と言うと、どうでしょう、なんだか少し落ち着かない感じがしませんか。

「終える」は、自動詞「終わる」に対応する他動詞だということのほかに、書きことばを中心とした、特にかしこまった場面に限ってよく使うものだというような性質が、どうもあるようなのです。

話しことばの場合には、「終える」のかわりに「終わる」を使うような傾向が見られます。
さきほどの文だと、

「これで、発表を終わります」[他動詞]

のように言うほうが自然です。つまり「終わる」は、自動詞だけでなく、他動詞として使う場合もあるということになります。

次に、「食べ終わる・食べ終える」について考えてみます。この場合、「(カレーを)食べ終わる・食べ終える」の両方とも可能です。ただしさきほど見たように、単独の動詞「終わる」には、自動詞・他動詞の両方の機能があります。それに対して「終える」は、もともと純粋な他動詞です。そもそも他動詞は、「意志」をもっておこなわれる行為を示すことが多いものなのです。そのため、「食べ終える」は、「食べ終わる」よりも、〔強い意志〕のニュアンスを帯びることがあります。

また調査をしてみたところ、「ごはんを食べ終えた」という言い方はおかしいという人(「ごはんを食べ終わった」という言い方のみを支持)が、高齢層に多く見られました。一方で、若い年代ではこの回答は少なく、「両方ともおかしくない」と考える人が多いようです。

「食べ終える」のほうは「…終える」を用いているので特に話しことばでは使いにくいと感じられ、そのために(かつては)支持率が高くなかったのかもしれません。しかし近年ではこの傾向は薄れてきて、この「食べ終える」も認められるようになってきたというのが現状のようです。

ここまで無事に書き終えることができてホッとしてます。

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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