「つなぐ」と「つなげる」使い分けは?年代による使用率の違い

公開:2022年4月1日

Q
2本のひもを「つなぐ」「つなげる」、どちらがよいでしょうか。
A
現代語としては、どちらでもかまいません。動詞としては「つなぐ」のほうがより伝統的な形ですが、今は両方とも使われています。ただしニュアンスの違いがあって、「つながりにくいものを、(努力して)くっつける」というような状況の場合には、「つなげる」が用いられることが多いようです。

<解説>

「つなぐ」は他動詞、「つながる」は自動詞です。こういうふうに対応しています。

  • つなG – u (つなぐ) ~ つなG – aru (つながる)

-uと-aruが入れ替わる形で、他動詞と自動詞になっているのです(仮にこれを「u-aru対応」と呼んでおきましょう)。同じパターンのものに「刺す~刺さる」「はさむ~はさまる」「ふさぐ~ふさがる」「またぐ~またがる」などがあります。

この「u-aru対応」は、実は仲間が多くないのです。日本語でいちばんよくあるパターンは、次の「eru-aru対応」なんです。

  • あG – eru (揚げる) ~ あG – aru (揚がる)
  • につM – eru (煮詰める) ~ につM – aru (煮詰まる)
  • まZ – eru (混ぜる) ~ まZ – aru (混ざる)
  • つK – eru (漬ける) ~ つK – aru (漬かる)

「つなげる」という比較的新しい(とは言っても江戸時代にはすでに使われていたようですが)他動詞は、この典型的なパターンである「eru-aru対応」にならって(あたかも「長いものに巻かれる」かのように)生まれたものだと考えられます。

  • つなG – eru (つなげる) ~ つなG – aru (つながる)

こんな感じで、伝統的な他動詞「つなぐ」に加えて、新しい他動詞「つなげる」が出てきたのです。
「2本のひもを【つなぐ/つなげる】」という例文で、全国調査をしてみました。その結果、「つなぐ派〔=「つなぐ」と言う+どちらかといえば「つなぐ」と言うことのほうが多い〕」の回答が全体では主流なのですが(6割程度)、これは若い人になるほど少なく、20歳代では「つなげる派」が「つなぐ派」を上回っていました。また、関東・甲信越では両者がほぼ同数になっています。なお、質問の形式が違うので単純には比較できませんが、1995年におこなった調査では、自分では「つなぐ」と言うという回答は7割を超えていました(『放送研究と調査』1996年4月号)。「つなぐ」から「つなげる」への移行が、進みつつあるというわけです。

おそらく移行期である現在では、「つなぐ」と「つなげる」は、互いにニュアンスをずらすことで「すみ分け」をしているようです。どういうことか説明しましょう。

  • 「想いがあふれたらどうやって どんなきっかけタイミングで 手を繋(つな)いだらいいんだろう」(「わたがし」作詞 清水依与吏 歌 back number)

この「手をつないだら(つなぐ)」については、「手をつなげたら(つなげる)」とは言いにくいように感じませんか。「つなぐ」は、「もともと、自然な形でつながるような場合」によく使うものになっているようで、「手」のようにつなごうと思えば簡単につながるものだと、「手をつなげる」とはふつう言わないのです。

一方、「合格につなげる」など、一定の努力・労力が必要な場合には「つなげる」のほうがよく使われる傾向が見られます。やっと結論につなげることができて安心しました。

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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