「ご覧になりましたでしょうか」?

公開:2020年2月1日

Q
「ご覧になりましたでしょうか」という言い方は、おかしいのでしょうか。
A
文法的には、おかしくはありません。ただし、この言い方をどのような場合に使うのかが、非常に重要なポイントです。何の問題もない場合と、そうでない場合があります。

<解説>

まず、この言い方そのものについてお話しします。「ご覧になる」は「見る」の尊敬語で、これをもとにしたものに「ご覧になりましたか」という言い方があります。ここに「でしょう」を加えてやわらかく仕上げたのが「ご覧になりましたでしょうか」です。この言い方に対しては「敬語表現として過剰だ(「ご覧になりましたか」で十分だ)」という意見もあるようなのですが、現代語としてすでに広く認められているものだと思います。ただし、「でしょう」ではなく「です」を添えた「ご覧になりましたですか」という言い方については、一般的なものではありません。

次に、使い方について考えてみます。
(A)「○○先生のお書きになったコラム、ご覧になりましたでしょうか。」
(B)「私の書いたコラム、ご覧になりましたでしょうか。」

(A)に比べて、(B)のほうは(聞き手とどのくらい親しいのかということにも左右されますが)やや失礼な感じがするのではないでしょうか。ではこの言い方はどうでしょう。
(B’) 「私の書いたコラム、(ご覧いただけたでしょうか/ご覧くださいましたでしょうか)。」

(B’)だと、受け入れられるのではないかと思います。

このように、話題の対象物〔ここでは「私の書いたコラム」〕として「話し手、すなわち私」が深くかかわる文脈では、(B’)のようになんらかの「授受表現(「いただく」「くださる」など)」を伴って表現したほうが、感じがよく聞こえます。(B)のように授受表現のない言い方は、文法的にはまちがっていなくても、場面によっては「尊大・えらそう」な印象を与えてしまいかねません。

こうした表現をめぐっては、実は人によって感じ方がさまざまです。「部長、先日企画書を書いてお机に置いておきましたが、ご覧になりましたでしょうか。」という言い方で調査をして集計してみたところ、「感じが悪い」(47%)と「問題ない」(49%)という割合は、ほぼ同程度になりました。ただし年齢によって違いがあり、30歳から49歳の層では「感じが悪い」という答えがやや多く現れています。このような言い方に対して少し「厳しめ」の年代です。

最後までお読みになり、ありがとうございます。(←どうでしょう、このような言い方の感じの悪さがお分かりいただけるでしょうか)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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