二字漢語のアクセント

公開:2020年1月1日

Q
最近、災害のニュースなどで、「支援」「防災」「解決」などのことばを、1拍目が高いアクセント([シ\エン][ボ\ーサイ][カ\イケツ])で言う専門家が増えてきたように感じる。また「背景」も、NHKのアナウンサーは[ハイケー ̄]と平らなアクセントだが、ほかの出演者は、[ハ\イケー]と言っていることも多い。アクセントが変わってきているのだろうか。
A
二字の漢語の中には、もともとは平板型だったアクセントが次第に頭高型アクセントに変化しているものがあります。NHKでは、そのような語についてアクセント調査を行い、時代の変化にあったアクセントの見直しを行っています。現状では、「支援」については2番目のアクセントとして頭高型を認めていますが、「防災」「解決」「背景」については、放送では、従来の平板型アクセントのみを使うようにしています。

<解説>

アクセントは時代とともに変化しますが、大きな傾向の1つに「一部の二字漢語の頭高化」というものがあります。ご質問にあるように、「支援」「防災」「背景」「解決」などの言い方が、従来は[シエン ̄]のように平らなアクセントで言っていたのに、[シ\エン]のように、語の1拍目を高く発音する言い方に変わってきたような傾向を言います。理由としてはいくつかありますが、1つには、「海外支援」([カイガイシ\エン])のように発音していた複合語のアクセントとしての[シ\エン]が、前部要素の「海外」が切り離されてもそのまま残り、「支援」と単独で使われる場合にも頭高型で発音されるためと考えられます。あるいは、その語を強調しようという気持ちの表れから、演説口調のように語頭を強く発音するためではないか、とも考えられます。

アクセント辞典にもこのような変化は反映されています。例えば、今より1つ前の1998年版のアクセント辞典(写真左)の改訂時には、「資産」「卵白」「罫(けい)線」などに、新たに頭高型アクセントを追加したほか、最新の2016年版(写真右)でも「採決」「資本」「心拍」などに同様に頭高型アクセントを加えました。例えば「資本」という語は、もともとアクセント辞典に載っているのは平板型だけでしたが、アナウンサーに対する調査で頭高型アクセント([シ\ホン])についてたずねたところ、68%の人が「放送で使うのに望ましい」と回答したため、2番目のアクセントとして加えたという経緯があります。

それに対して、ご指摘の「防災」「解決」「背景」のほか、「行政」「判決」など、政治家や行政・司法の関係者がよく使うことばにも、頭高型アクセントが使われているのをよく耳にします。しかし、これらは、放送のことばとして使うことができるほどには変化が進んでいないと判断し、従来の平板型アクセントのみを使うことにしています。例えば「背景」については、頭高型アクセントの[ハ\イケー]についてアナウンサー調査で聞いたところ、「放送で使うのに望ましい」と答えた回答は4割以下だったため、追加はしませんでした。とはいえ、ご指摘のように、アナウンサー以外の職種の記者などが出演した際には、頭高型アクセントが使われることも多いため、今後もアクセント変化の動向を見極め判断していくことにしています。

以下、参考まで、現行版アクセント辞典の中の、主な二字漢語のアクセントを挙げました。ぜひ、実際に辞典を手にとって確かめてみてください。

●2016年版で、新たに頭高型アクセントを追加した語
遠近 胸郭 鉱石 高低 採択 座長 市政 市制 資本 じん帯
心拍 頭巾 賃貸 転記 乳腺 農政 廃炉 風水 羊水
●2016年版で、頭高型アクセントを掲載していない語(平板型アクセントのみ)
解決 行政 告知 国会 雇用 指導 製品 判決 通信 背景

メディア研究部・放送用語 滝島雅子

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