「行う」と「開(ひら)く」

公開:2019年11月1日

Q
最近のニュースで「追悼式が開かれました」という表現があり、違和感を覚えた。卒業式や結婚式などの改まった式典は「行われる」がふさわしいのではないかと思うが、「開かれる」「行われる」の使い分けの基準について教えてほしい。
A
「行う」と「開(ひら)く」は、どちらも「実施する」の意味で使われますが、伝える事柄によって、「どちらも使えるがニュアンスの差が出る場合」と、「どちらか片方しか使えない場合」とがあります。

<解説>

まず、それぞれの意味と用例を改めて国語辞典で引いてみると以下のように解説されています。

「行う」・・・ 何らかの事柄や動作をする。多くは、一定の方式に従ってする、の意を含む。
「熱心な討議が行われる」「卒業式は3月22日に行われる」
「開く」・・・ 会を催す。開催する。「個展を開く」「同窓会を開く」

『大辞林第四版』

ここからも分かるように、「行う」は、「討議」や「卒業式」など、ある一定のルール・順序にのっとって実施されるものによく使われます。ほかに、「追悼式」や「結婚式」などの「儀式」や「試合」「裁判」などにも「行う」が使われることが多いようです。

一方、「開く」は、催し物全般に使われますが、「同窓会」「展覧会」「(~)集会」「(~)大会」「(~)委員会」など「~会」が付く事柄に使われることが多いようです。

ちなみに、『現代日本語書き言葉均衡コーパス』(BCCWJ)(注)を対象に、「~が行われる」と「~が開かれる」(ともに「実施する」の意に限る)がどのような事柄によく使われているかを調べてみると、表1と表2のような結果になりました。それぞれ、頻度の高い順に20位までを示しています。灰色で塗りつぶされているのは、「行われる」と「開かれる」の両方で、20位以内に入っているものです。

この結果からは、以下のような傾向がうかがえます。

・「行われる」が使われる事柄⇒表彰式、除幕式、調印式など「○○式」の儀式や式典、祭事や神事など

・「開かれる」が使われる事柄⇒総会、宴会、議会、国会、公聴会、博覧会、舞踏会など「○○会」の事柄や、オリンピックやサミット、教室や講座など。

こうした傾向は、あくまでも「傾向」であって、はっきりと線引きができるわけではありませんが、「イベント」や「コンサート」のように、どちらもよく使われるものがある一方で、「神事が行われる(?開かれる)」「市が開かれる(?行われる)」「パーティーが開かれる(?行われる)「教室/講座が開かれる(?行われる)」のように、どちらか片方しかなじまないものもあります。ある程度の使い分けを踏まえておくとよいでしょう。

(注) 国立国語研究所が、現代日本語の書きことばの全体像を把握するために構築した均衡コーパス。書籍全般、雑誌全般、新聞、白書、ブログ、ネット掲示板、教科書、法律などのジャンルにまたがって1億43万語のデータを格納し、各ジャンルについて無作為にサンプルを抽出している。

メディア研究部・放送用語 滝島雅子

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