「朱色」は,シュイロ? シューイロ?

公開:2019年11月1日

Q
「朱色」ということばは、シュイロと読むのでしょうか、シューイロと読むのでしょうか。
A
シューイロという発音も用いられていますが、シュイロのほうが一般的です。

<解説>

「朱色」については、調査の結果、「シュイロと言う」という人が7割近くになりました。「朱」はシュ、「色」はイロと読むからシュイロだということになり、一見、当たり前に感じられますね。ですが、その背景はそれほど単純ではないのです。

もともとシュイロという発音をもつことばがシューイロのように長く発音されることを、「長呼(ちょうこ)」と言います。同じように長呼がよく起こることばとして、かつてこのコーナー(2002年12月)でも取り上げた「女王」があります。ジョーオーは実際にはよく使われているのですが、今のところ、漢字どおりに読んだジョオーのほうが規範的な形だということになっています。

  1. 「朱色」 シュイロ [長呼]シューイロ
  2. 「女王」 ジョオー [長呼]ジョーオー

しかし、ほかのことばの中には、(漢字どおりの読み方ではなく)長呼の形しか現代では使わないものもあるのです。

  1. 「夫婦」 フフ   [長呼]フーフ
  2. 「詩歌」 シカ   [長呼]シーカ
  3. 「女房」 ニョボー [長呼]ニョーボー(ニョーボ とも)

こちらのほうは、歴史的に定着しているからという理由で、長呼のものが規範形になっています。また、次のようなものも、長呼の形のほうがなじみがあります。

  1. 「月火水」ゲツカスイ [長呼]ゲツカースイ
  2. 「金土日」キンドニチ [長呼]キンドーニチ
    (ただし「土日」は、長呼を起こさないドニチが一般的)

さらに、小数を含む数字「2.6」「5.6」などが長呼の形でニーテンロク、ゴーテンロクとなるのも、同じ現象として説明することができるでしょう。

このように長呼は、短い1拍の音の部分が長くなる現象なのですが、1拍の音であれば常に起こるというわけではありません。むしろ普通は起こらない場合のほうが多いようです。

  1. 「黄色」 キイロ  × キーイロ
  2. 「茶色」 チャイロ × チャーイロ
  3. 「魔王」 マオー  × マーオー
  4. 「仁王」 ニオー  × ニーオー

ややこしいお話でしたが、ご理解いただけたでしょうか。一応、気(キー)使って書いたつもりです。

(2019年6月実施、1,203人回答[サンプル数4,000、有効回答率30.1%]

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

※NHKサイトを離れます