「いちだんらく」「ひとだんらく」

公開:2019年10月1日

Q
放送で使う場合に「一段落」の読み方は「いちだんらく」「ひとだんらく」、どちらだろうか。
A
NHKでは、現在、「いちだんらく」と読むことにしています。
一般には、「いちだんらく」のほかに「ひとだんらく」の読み方もありますが、「いちだんらく」のほうが伝統的な読み方であると考えて、このようにしています。

<解説>

現代の国語辞典では「いちだんらく」が主な見出しとして示されています。中には「ひとだんらく」を見出しだけ(空見出し)で示しているものも見られます。

  1. 「いちだんらく」のみ掲載
    日本国語大辞典第2版、新明解国語辞典第7版、現代国語例解辞典第5版
  2. 主見出し「いちだんらく」、空見出し「ひとだんらく」
    明鏡国語辞典第2版、新選国語辞典第9版、岩波国語辞典第7版新版、大辞泉
    第2版、三省堂国語辞典第7版、広辞苑第7版、大辞林第4版

また、上記の辞書の中には次のような説明をつけているものもあります。

  1. 『明鏡国語辞典第2版』
    1. 「いちだんらく」の項目→「ひと段落」も増えているが、「いち段落」が本来。
    2. 「ひとだんらく」は見出しのみ。
  2. 『新選国語辞典第9版』
    1. 「いちだんらく」の項目→「ひとだんらく」は近年多く聞かれる誤読。
  3. 『岩波国語辞典第7版新版』
    1. 「いちだんらく」の項目→「ひとだんらく」は誤り。
    2. 「ひとだんらく」の項目→「いちだんらく」の漢字表記の読み誤り。
  4. 『大辞泉第2版』
    1. 「いちだんらく」の項目→「ひとだんらく」と読むのは誤りだが、話し言葉では使われることも多い。
    2. 「ひとだんらく」の項目→「いちだんらく(一段落)」の誤読。
  5. 『現代国語例解辞典第5版』
    1. 「いちだんらく」の項目→「ひとだんらく」と読まれることも多いが、「いちだんらく」が正しい。

このように、国語辞典には「ひとだんらく」は誤読などの判断をしているものが見られます。

例外もありますが、「漢語+漢語」「和語+和語」と前後で読み方を合わせるパターンが一般的と言えます。「一段落」については、「一」「段落」ともに音読み(漢語)とする「いちだんらく」が伝統的であるという考え方です。

一方で、国語辞典の説明にもあるとおり、訓読みの「ひと」+音読みの「だんらく」で「ひとだんらく」という読み方がされることも多くなっています。

「ひとだんらく」という語形は、下記のように1977年にはすでに指摘されており、国語辞典に空見出しなどの形で示されるようになったのは2000年以降です。

  1. 『やさしい国語教室 続』(大村はま著・1977)
    〈問い〉「一段落」は「いちだんらく」と思っていましたら、NHKアナウンサーが「ひとだんらく」と言いました。どちらでもいいような気もします。
    〈答え〉やはり、どっちでもいいのではなくて、「いちだんらく」です。(後略)

さて、「和語+漢語」の語形である「ひとだんらく」が使われるようになったのはなぜなのでしょう。「一+漢語」の語で「一見識」「一大事」「一転機」「一面識」は「いち○○」と読みます。一方で「一工夫」「一苦労」「一安心」のように「ひと○○」と読む語も多くあります。このように似た構造の語からの類推で「ひと+漢語」(ひとだんらく)の読みが行われるようになったのではないでしょうか。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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