「丁寧に」? 「ご丁寧に」?

公開:2019年8月1日

Q
ご丁寧に教えてくださり、ありがとうございます」という言い方は、嫌みくさいのでしょうか。
A
そう感じる人もいて、これはなかなか難しい問題です。場合によっては前後の文脈やイントネーションに気を使ったりするなど、決して「嫌み」と取られてしまわないような工夫が必要になってくることもあるかもしれません。

<解説>

「丁寧」に「ご」を付けた「ご丁寧」は、相手の「丁寧なふるまい」に敬意を表す言い方です。そう考えると、「ご丁寧に教えてくださり、ありがとうございます」は、「相手」が私に教えてくれているふるまいに関して「ご丁寧に」という形で敬意を表しているのですから、問題はまったく無いように感じられます。ところがここがまた難しいところで、「ご丁寧に」というのは、「ばか丁寧に」というニュアンスを帯びてしまうこともあることばなのです。

全国調査の結果では、「『丁寧に』のほうが感じがいい(『ご丁寧に』は感じが悪い)」という回答が31%で、一方この逆の「『ご丁寧に』のほうが感じがいい(『丁寧に』は感じが悪い)」という回答も31%と、どちらかが主流であるとも言えないような状況になっていました。また年代別には、おおむね、60歳以上の高齢層では「丁寧に」の支持率が高く、20代・30代では「ご丁寧に」が高いという概況になっています。高齢層のほうが、「ご丁寧に」を「嫌み」だと感じてしまう傾向が相対的に強いというわけです。

丁寧さや敬意をあらわす「お」「ご」は、使いこなすのがなかなかやっかいなものです。たとえば「受験」のことを「お受験」と言うと、丁寧さや敬意以外のニュアンスも生じます。「来年、お子さんは『お受験』ですか?」という言い方に対しては、大学受験や高校受験ではなく、小学校受験や幼稚園受験に限定されるような印象を抱かないでしょうか。ほかに、「題目」と「お題目」、「遊び」と「お遊び」、「役所」と「お役所」、「ニュー」と「おニュー」(「フランス」と「おフランス」?)、……などなど、似たような例がいくつもあります。

もし「いつもご丁寧な解説、楽しく読んでいます」という感想をいただけたら、ぼくはきわめて無邪気な性格なので、ことばどおりにありがたく受け止めます(←自分に甘い)。

2018年7月実施、1,203人回答[サンプル数3,982、有効回答率30.2%]

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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