アルファベットによる略記

公開:2019年6月1日

Q
テレビ画面に表記するのに、「コンビニエンスストア」のことを「CV」としてもいいだろうか。
A
「コンビニエンスストア」は、放送では外来語を略して「コンビニ」として使われることが多くなっています。ただし、「CV」とアルファベットで略す表示は、意味が伝わりにくくなるため、放送では避けたほうがいいでしょう。コメントで「コンビニ」と言っているからといって、多くの人には「コンビニ」と「CV」が結びつきません。放送で画面表示するのであれば、コメントに合わせて「コンビニ」あるいは「コンビニエンスストア」としたほうがいいでしょう。

<解説>

このようなアルファベットによる略語は、もとの語の頭文字を並べていることから「頭文字語」「頭字語」などと言われます。放送ではいくつもの頭字語が使われ、頭字語を使うことを禁止しているわけではありません。しかし、アルファベットによる略語は、カタカナで記される外来語以上に意味が伝わりにくいとされます。略字語にせず言いかえる。あるいは使うと判断した場合は言い添えをするなどの工夫をしてください。

頭字語には、次のようなものがあります。

ニュースでは組織名として使われる頭字語が多く見られます。「ASEAN」(アセアン)、「NATO」(ナトー)、「UNESCO」(ユネスコ)、「FIFA」(フィファ、フィーファ)などのように、略語をつなげて単語として読むものと、「WHO」(ダブリューエイチオー)、「YWCA」(ワイダブリューシーエー)、「EU」(イーユー)などのようにアルファベットを個別に読むものとがあります。こうした固有名詞を放送で使う場合には、言い添えをしたうえで、アルファベット読み、アルファベット表記されます(例:コメント「EU、ヨーロッパ連合」、表記「EU」)。

また、普通名詞として使われる頭字語もあります。普通名詞の頭字語を放送で使う場合は示し方にいくつかのパターンがあります。例えば、次のようなものです。

  1. ①アルファベット表示し、アルファベット読みでそのまま使う(例:VTR、PRなど)
  2. ②言い添えをしたうえで使う(例:UFO、未確認飛行物体など)
  3. ③多くの場合、日本語の言い方に言いかえる(例:VIP⇒政府要人など、CM⇒(テレビ)コマーシャル、CV⇒コンビニ(エンスストア)など) など

今回、質問にある「CV」は、そのままでは何を指しているのか伝わりにくいと考えられ、③の例に当てはまります。放送では多くの場合、頭字語は使わず「コンビニ」あるいは「コンビニエンスストア」と言いかえて使われます。

なお、頭字語が表記専用の語として使われることもあります(表記:VS.、読み:対など)。例えば、「A.M.」「P.M.」なども「VS.」と似た使い方をされることがあり、それぞれ「午前」「午後」と読みかえられて使われることがあります。2017年に用語班が行った調査(日本語のゆれに関する調査・満20歳以上の男女4000人対象)で「巨人 VS. 阪神」「ヤンキース VS.オリオールズ」の「VS.」をどのように読むかを聞いたところ、約半数が「対」と読む結果になりました。

(日本語のゆれに関する調査・満20歳以上の男女4000人対象)

このように、一部の頭字語は表記専用の語として、読みと表記が不一致であることが定着している語もあるようです。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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