「Halloween」のカタカナ表記 ことば 放送現場の疑問・視聴者の疑問 公開:2018年10月1日 Q 「Halloween」は、どのようにカタカナ表記すればいいだろうか。 A 「ハロウィーン」です。 『NHKことばのハンドブック第2版』に掲載があります。 <解説> 毎年10月31日に行われるお祭りで、『大辞林第3版』(以下『大辞林』)には次のように説明されています。 万聖節(11月1日)の前夜祭。古代ケルト起源で、秋の収穫を祝い悪霊を追い出すための祭り。アメリカでは、カボチャをくりぬき目鼻口をつけた提灯(ちょうちん)を飾り、夜には怪物に仮装した子供たちが近所を回り菓子をもらう。 一般には、「ハロウィン」「ハロウィーン」どちらの表記も見られますが、NHKの放送では、原音[hæ̀louíːn]に近い語形として「ハロウィーン」(アクセントは[ハロウィ\―ン]または[ハ\ロウィーン])を使っています。新聞社・通信社でも、この語形を使っています。 このことばはいつごろから日本で使われるようになったのでしょうか。 辞書の掲載で古い例としては、『角川外来語辞典第2版』に、「ハローイーン」の語形で立項があります。この辞書の用例として、いずれも中日新聞の用例として1956年11月1日(用例の語形は「ハロウェー」)、1957年10月22日(用例の語形は「ハローイーン」)が示されています。 なお、『広辞苑』では第5版(1998)から「ハロウィン」で掲載されています。 辞書以外で、古い用例を調べると、1908(明治41)年の『外遊九年』という本に「ハロウィン」と「ハロウイーン」という語形が見られますが、1950年代までは、「Halloween」をカタカナで示す用例は少ないようです。明治・大正時代には、「万聖節の前夜祭」という言い方も見られますが、その用例も少なく、このお祭り自体あまり知られていなかったということかもしれません。 このことばが一般化したのは、1990年前後のようです。1992年、ハロウィーンの日にアメリカ・ルイジアナ州で日本人留学生が射殺される事件が起き、この事件について伝えるニュースの中で多く使われました。 また、川崎で行われる仮装パレードや、東京ディズニーランドのイベントがいずれも1997年から始まっています。 このほか、関連の語として、最近問い合わせが多いのが、「ハロウィーン」のグッズとしてよく見られる、カボチャをくりぬいてつくるちょうちん「jack-o’-lantern」のカタカナ表記です。「ランタン持ちの男」の意(『大辞林』)の語で、「o’」は「of」の省略です。外来語としては、まだ定着しているとは言えず、意味がわからないという人も多いでしょう。放送で使う場合には、「カボチャをくりぬいて作ったちょうちん」「ハロウィーンで使うカボチャのちょうちん」などと言いかえることをおすすめします。または、「カボチャのおばけ」などの言い方でもいいかもしれません。 どうしても外来語で伝えたいという場合は、「カボチャのおばけ」「カボチャのちょうちん」などと言い添えたうえで、①「ジャック・オ・ランタン」、②「ジャックランタン」の語形を使うことが考えられます。 原音は[dʒæ̀kəlǽntərn]なので、「ジャカランタン」「ジャコランタン」に近く聞こえるかもしれませんが、これらの語形は①②以上に定着しておらず、伝わりにくいでしょう。 メディア研究部・放送用語 山下洋子 ※NHKサイトを離れます
毎年10月31日に行われるお祭りで、『大辞林第3版』(以下『大辞林』)には次のように説明されています。
一般には、「ハロウィン」「ハロウィーン」どちらの表記も見られますが、NHKの放送では、原音[hæ̀louíːn]に近い語形として「ハロウィーン」(アクセントは[ハロウィ\―ン]または[ハ\ロウィーン])を使っています。新聞社・通信社でも、この語形を使っています。
このことばはいつごろから日本で使われるようになったのでしょうか。
辞書の掲載で古い例としては、『角川外来語辞典第2版』に、「ハローイーン」の語形で立項があります。この辞書の用例として、いずれも中日新聞の用例として1956年11月1日(用例の語形は「ハロウェー」)、1957年10月22日(用例の語形は「ハローイーン」)が示されています。
なお、『広辞苑』では第5版(1998)から「ハロウィン」で掲載されています。
辞書以外で、古い用例を調べると、1908(明治41)年の『外遊九年』という本に「ハロウィン」と「ハロウイーン」という語形が見られますが、1950年代までは、「Halloween」をカタカナで示す用例は少ないようです。明治・大正時代には、「万聖節の前夜祭」という言い方も見られますが、その用例も少なく、このお祭り自体あまり知られていなかったということかもしれません。
このことばが一般化したのは、1990年前後のようです。1992年、ハロウィーンの日にアメリカ・ルイジアナ州で日本人留学生が射殺される事件が起き、この事件について伝えるニュースの中で多く使われました。
また、川崎で行われる仮装パレードや、東京ディズニーランドのイベントがいずれも1997年から始まっています。
このほか、関連の語として、最近問い合わせが多いのが、「ハロウィーン」のグッズとしてよく見られる、カボチャをくりぬいてつくるちょうちん「jack-o’-lantern」のカタカナ表記です。「ランタン持ちの男」の意(『大辞林』)の語で、「o’」は「of」の省略です。外来語としては、まだ定着しているとは言えず、意味がわからないという人も多いでしょう。放送で使う場合には、「カボチャをくりぬいて作ったちょうちん」「ハロウィーンで使うカボチャのちょうちん」などと言いかえることをおすすめします。または、「カボチャのおばけ」などの言い方でもいいかもしれません。
どうしても外来語で伝えたいという場合は、「カボチャのおばけ」「カボチャのちょうちん」などと言い添えたうえで、①「ジャック・オ・ランタン」、②「ジャックランタン」の語形を使うことが考えられます。
原音は[dʒæ̀kəlǽntərn]なので、「ジャカランタン」「ジャコランタン」に近く聞こえるかもしれませんが、これらの語形は①②以上に定着しておらず、伝わりにくいでしょう。