「おろし大根」? 「大根おろし」?

公開:2018年3月1日

Q
「おろし大根」と「大根おろし」、どちらを使ったらよいのでしょうか。
A
どちらを使っても差し支えありません。ただし現代では、比較的若い年代では「大根おろし」のみを使うという人が多いようです。

<解説>

この2つの言い方は、どちらも古くから使われています。日本語の用例を非常に詳しく載せている『日本国語大辞典』では、「おろし大根」が使われている作品として江戸時代の浄瑠璃の例を、また「大根おろし」については同じく江戸時代の俳諧の例を掲げています。

ただし、ここで注意が必要です。「おろし大根」は「大根をすりおろした食べものそのもの」を指しますが、「大根おろし」はそれ以外に「大根おろしを作るための器具、つまり『おろしがね』」の意味でも使われます。そして、この「大根おろし」が「おろしがね」を指す例も、江戸時代にすでに見られるのです。また、食べものは「おろし大根」・器具は「大根おろし」という使い分けを個人的にしている、という人がいてもまったく不思議ではありません。

同じように考えてみると、「おろしわさび」は「食べもの」(と単純に呼ぶには少々からすぎるかもしれませんが)ですが、「わさびおろし」は「食べもの」と「器具」の両方の意味があると考えることができます。「おろしにんにく」と「にんにくおろし」も、これと同様です。

なお「もみじおろし」は、大根をとうがらしやにんじんと一緒にすりおろしたものです。これについては、専用の器具は存在しないので、食べものの意味しか持っていません。また語順を変えて「おろしもみじ」とすると、「紅葉(もみじ)をすりおろしたもの」という個性的な創作料理のようになってしまいます。同じように、「しらすおろし〔=「しらす」に「おろし(大根)」を添えたもの〕」はあっても「おろししらす」は考えにくいものです(あまり想像したくありません)。

ここから、「おろし大根」のように「動作+食材」の語順では「その食材を加工・調理した食べもの」という意味になり、一方「大根おろし」のように「食材+動作」の場合にはそれ以外の別の意味も生じうる、ということがわかってくるかと思います。

この「おろし大根・大根おろし問題」についてウェブ上で尋ねてみたところ、比較的若い人たちの間では「大根おろし」への統一化に向かっているような状況になっていました。なぜなのでしょうか。ピリッとしたうまい説明が、どうも思いつきません。

(NHK放送文化研究所ウェブアンケート、2017年9月~10月実施、555人回答)

メディア研究部・放送用語 塩田雄大

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