「ごぞんじ」「ご存じ」「ご存知」?

公開:2018年2月1日

Q
放送で「みなさん、よく「ごぞんじ」だと思います」という場合、「ご存じ」?「ご存知」?どちらを使うべきか。
A
NHKでは「ご存じ」を使うようにしています。

<解説>

「ごぞんじ」は
尊敬の意の接頭語「ご(御)」 + 「存ずる」の連用形「存じ」

「じ」は、動詞「存ずる」の活用語尾で、「知」の意味はありません。「ご存知」(あるいは「御存知」)と書かれることがありますが、「存知」の「知」は当て字です。

『岩波国語辞典第7版新版』(2011、以下『岩波』)では「存知」の表記について、「「存知」とも当てて書く」と説明しています。

また、辞書によっては「存知」をあやまりと判断するものもあります。たとえば『新選国語辞典第9版』(小学館・2011)には、「「ご存知」と書くのはあやまり」との説明があります。

NHKのほか、新聞社・通信社でも、この語については当て字を用いず「ご存じ」を使っています。なお、NHKでは当て字はすべて漢字で書かないようにしているというわけではありません。この語については前述のような国語辞典の掲載があり、語源どおりに当て字を用いないようにしています。

ここからは類推になりますが、「ご存知」と書かれる理由としては、「ご承知」ということばとの混同があるのかもしれません。「承知」は「旨を承って知ること」(『岩波』)という意味の漢語で、「知」の漢字を使って書くことがふつうです。「ご存じ」と「ご承知」とは、語源的に無関係ですが、どちらも「知る」という意味があることで共通しています。「ご承知」と同じく漢語であるかのように、あやまって解釈された結果、「ご存知」と書かれるようになったのではないでしょうか。

余談ですが・・・。

2017年12月の東京・国立劇場で上演されていた歌舞伎の外題に「御存梅の由兵衛」とありました。「ごぞんじうめのよしべえ」と読みます。これは、「存じ」の送りがなを省いた形です。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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