「◯◯年越しの卒業式」? ことば 放送現場の疑問・視聴者の疑問 公開:2017年10月1日 Q 戦争のために卒業式ができなかった、という話題を伝える際に「72年越しの卒業式」という表現は使えるだろうか? A 質問のような場合は、「72年ぶりの卒業式」のほうが適しているでしょう。 <解説> 「越し」は、『大辞林第3版』(三省堂・2006)に次のように説明があります。 年月の長さを表す語に付いて、その年月を経過する間、続いていることを表す。 例文としては「5年越しの懸案」が示されています。「5年の間ずっと懸案だった」という意味です。 質問にあるような場面で、「越し」を使うと、戦後72年の間卒業せずに、学生または生徒の状態でいた、というようにもとれてしまいます。 ちなみに、「越し」は、「足かけ」と同じ数え方をします(『NHKことばのハンドブック第2版』「◯年越し・年ぶり」p.158)。「足かけ」は「期間を数える時、1年、1月、1日に満たない最初と最後の端数も一つとして数える方法」(『岩波国語辞典第7版新版』2011)のことです。たとえば、3月3日から4月2日までのことを言う場合は「足かけ2か月」となります。そのため、卒業式が昭和20(1945)年に行われる予定だったのができず、今年平成29(2017)年になって行われたという場合は、「73年越し」となります。 一方、「ぶり」は、「時間を表す語に付いて、それだけの時間を経過して、再び同じ状態になること」を表します。72年たって再び卒業生という状態になり、卒業式を迎えるという意味になります。数え方は「満」で数えますので、「72年ぶり」で問題ありません。 メディア研究部・放送用語 山下洋子 ※NHKサイトを離れます
「越し」は、『大辞林第3版』(三省堂・2006)に次のように説明があります。
年月の長さを表す語に付いて、その年月を経過する間、続いていることを表す。
例文としては「5年越しの懸案」が示されています。「5年の間ずっと懸案だった」という意味です。
質問にあるような場面で、「越し」を使うと、戦後72年の間卒業せずに、学生または生徒の状態でいた、というようにもとれてしまいます。
ちなみに、「越し」は、「足かけ」と同じ数え方をします(『NHKことばのハンドブック第2版』「◯年越し・年ぶり」p.158)。「足かけ」は「期間を数える時、1年、1月、1日に満たない最初と最後の端数も一つとして数える方法」(『岩波国語辞典第7版新版』2011)のことです。たとえば、3月3日から4月2日までのことを言う場合は「足かけ2か月」となります。そのため、卒業式が昭和20(1945)年に行われる予定だったのができず、今年平成29(2017)年になって行われたという場合は、「73年越し」となります。
一方、「ぶり」は、「時間を表す語に付いて、それだけの時間を経過して、再び同じ状態になること」を表します。72年たって再び卒業生という状態になり、卒業式を迎えるという意味になります。数え方は「満」で数えますので、「72年ぶり」で問題ありません。