「プレミアム」か?「プレミア」か?

公開:2017年8月1日

Q
人気があって取りにくい電車の切符について言う場合、「プレミアムのついた切符」「プレミアのついた切符」どちらを使えばいいだろうか?
A
外来語を使わずに、伝えたい内容を説明的に言ったほうが、適切に伝わるでしょう。例えば、「人気があって手に入りにくく、一部では本来の料金よりも高く取り引きされている」、または、「人気で取りにくい貴重な切符」などの言い方が考えられそうです。
なお、「プレミアム」と「プレミア」との使い分けは次のとおりです。どうしてもどちらかを使いたいのであれば、伝えたい内容に合わせて選んでください。
今回伝えたい内容が、人気があるために「売り出し価格よりも高い値段で取り引きされている切符」ということであれば「プレミアム(割増金)のついたチケット」または「プレミアのついたチケット」と、どちらも使うことができます。
その切符が一般の電車の切符よりも「上等な切符」「高価な切符」であるということを言いたいのであれば、「プレミアムな切符」と言うことができます。この場合、「プレミアな切符」とはあまり言いません。また、この意味の場合は、もとの価格よりも高くなっていたり、おまけがついていたりということではなく、その切符自体が高価であること言っているだけなので、「プレミアム(または、プレミア)のついた切符」とは言えません。

<解説>

「プレミアム」「プレミア」について、『日本国語大辞典第2版』(小学館・2002。以下『日国』)では次のように説明されています。

プレミアム
  1. 入場券や記念切手などを売買するとき、売り出し価格の上に加えられる割増金。また、俗に、手に入れにくい入場券などが、闇で取り引きされる際の値上がり分。
  2. 商品につける景品や、懸賞の賞品など。比喩的に用いて、特別の恩恵。
  3. 株式や債券などの額面超過額。
  4. 保険料。保険掛け金。
プレミア
「プレミアム」の略。

このほか、『三省堂国語辞典第7版』(2014)には、「プレミアム」に「(商品の)おまけ、景品」「特別に上等であること」などの意味が記されています。

「プレミアム」は、明治時代にはすでに使われていたようです。『日国』の用例では、「プレミヤム」の形で明治40(1907)年の朝日新聞の例が示されています。また『日用舶来語便覧』(光玉館・明45(1912))にも立項があります。「プレミア」は『現代日用新語辞典』(文芸通信社・大9(1920))の「ぷれみあむつき」の項目で、「普通プレミヤ附と云ふ」と説明されています。

一方、英語では「プレミアム」と「プレミア」とで意味が異なります。

「premium」(プレミアム)は、「賞、賞品」「割増金」などの意味や、「上等な、上質な」といった意味があり、「premiere」(プレミア)は「初日、初演」「最初の、主要な」、「premier」(プレミア)は「首相」「最高の」という意味があります(『ランダムハウス英和大辞典』小学館・2002)。

「プレミアム」と「プレミア」は、次のようにまとめることができます。

「プレミアム」は、明治時代から使われている外来語であり、これを省略して「プレミア」とも言います。

2つの意味があり、「割増金」という意味の場合は、慣用的に、「プレミアム(プレミア)がついた」「プレミアム(プレミア)つき」などの言い方をします。また、「上等な」「特別に上等な」といった意味でも使われます(例:プレミアム会員、プレミアムな時間)。この意味の場合も「プレミア」と省略して使われることがありますが、近年では「プレミアム」が使われることが多そうです。

英語では「プレミアム」と「プレミア」とが別々のことばとしてあります。「プレミア」が外来語として使われるようになってきたことで、「プレミアム」と「プレミア」の使い分けがはっきりしてきているようです。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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