「vs.」の使い方

公開:2017年6月1日

Q
番組で「〇〇対△△」を「VS」を使って表したい。どのように表記すればいいだろうか。
A
放送では、アルファベットではなく「〇〇対△△」のように「対」を使うことをおすすめします。また、「☓」などの記号を使って表記することもできます。
アルファベットを使いたい場合は、英和辞典が見出しとしている「vs.(小文字+ピリオド)」または「VS.」(大文字+ピリオド)を使ったほうがいいでしょう。
例 〇〇vs.△△
〇〇VS.△△
「vs」「VS」(ピリオドなし)の表記については、下記の「解説」のとおりです。「解説」を読んだうえで、番組で使う表記を判断してください。

<解説>

放送番組ではスポーツの対決に限らず、何かと何かがたたかっていることをわかりやすく示すために下記のようにテレビ画面に表示することがあります。

  1. 例 ①「たまご焼き対から揚げ」
  2.     ②「たまご焼き×から揚げ」
  3.     ③「たまご焼きVSから揚げ」「たまご焼きvsから揚げ」
  4.     ④「たまご焼きVS.から揚げ」「たまご焼きvs.から揚げ」
  5. ※弁当に入れる具材の対決として料理番組で実際に使われた例。
    番組では「vs.」が使われていました。

①と②については、上記に説明をしたので、ここでは③と④のようなアルファベット表記について説明します。次に示す、2つの考え方ができます。

考え方(1)

英語には、略記の場合、「.」(ピリオド)をつけるルールがあります。「vs」も「versus」の略記であるため、ピリオドをつけることが英語のルールにのっとった表記です。例えば、『ランダムハウス英和大辞典第2版』(研究社・2002)、『新英和大辞典第6版』(研究社・2002)には、「vs.」(小文字+ピリオド)で立項されています。

放送で、英語の表記を使う場合、英和辞典に掲載されていない形で使うと、「正しくない」「間違っている」と指摘されることがあります。英語は英語のルールどおりに書くべきであり、英語のルールどおりに書かないのであれば、アルファベットは使うべきではない、という考え方による指摘です。

この考え方に立てば、④の表記を使うことになります。

考え方(2)

③のようなピリオドをつけない形は、日本語的な表記と言えます。

日本語には、ことばを省略した場合にピリオドなどをつけるルールはありません。「vs.」が、英語から日本に入り、日本語では意味のない「.」(ピリオド)は省略され、日本語で使いやすい「vs」「VS」という形で定着したと考えることもできるでしょう。

「vs」「VS」の表記で国語辞典にも立項されています(例:『日本国語大辞典第2版』(小学館・2001)、『新明解国語辞典第7版』(三省堂・2012)など)。

この考え方に立てば、③の表記も使うことができます。

この問題は、第1413回放送用語委員会(2017.2.24開催)で取り上げました。

審議内容は『放送研究と調査』2017年6月号に掲載されます。あわせてご覧ください。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

※NHKサイトを離れます