貯金を「切り崩す」「取り崩す」どちらを使うべき?

公開:2016年6月1日

Q
放送で「貯金を切り崩す」と言ったところ、「取り崩す」ではないか、という意見がありました。どう考えればいいのでしょうか。
A
本来は「貯金を取り崩す」です。

<解説>

「今ある貯金から少しずつとって生活費にあてる」という意味で使う場合、どの動詞を使うかという問題です。

一般には、「貯金を取り崩して生活をする」「貯金を切り崩して生活をする」どちらも耳にするように感じますが、国語辞典の多くは「取り崩す」の項目で、「貯金を~」の用例を示しています。

『大辞林』(第3版・2006)
取り崩す:
①くずして取り去る。「廃屋を~す」
②まとまったものから少しずつ取る。「預金を~す」
切り崩す:
①ものを切ったり、けずり取ったりしてもとの形でなくする。「丘を~して宅地にする」
②相手側のまとまりを崩し、勢力を弱める。「敵の一角を~す」「反対派を~す」

また、『三省堂国語辞典』(第7版・2014)は、「切り崩す」に「貯金を~」の用例がありますが、語釈に「あやまって」と書かれており、本来は「取り崩す」であることを示しています。

語の意味や、国語辞典で示されている用例などから、本来の言い方は「貯金を取り崩す」であることがわかります。

しかし、実際には、「貯金を切り崩す」という言い方を耳にすることも多くなっています。

2010年7月に文研で調査を行いました(2010年7月8日~19日。全国満20歳以上の男女4000人に行った調査。有効回答数は1276人)。

この調査では、a.「貯金を取り崩す」、b.「貯金を切り崩す」のどちらがおかしくて、どちらがおかしくないか、を聞きました。

全体では、「取り崩す」はおかしくないが、「切り崩す」はおかしいという人32%、一方、「切り崩す」はおかしくないが、「取り崩す」はおかしいという人42%という結果でした。

年代別にみると、図のとおり、おかしくないと思う表現が異なっています。若い年代は「切り崩す」のほうを選び、年代があがると「取り崩す」を選んでいます。

(2010年7月8日~19日。全国満20歳以上の男女4000人に行った調査。有効回答数は1276人)

本来の言い方は「取り崩す」です。「貯金を切り崩す」と言うと、おかしいと感じられてしまう場合があります。

こうしたことを踏まえて、ことばを選ぶ必要があります。

また、こうした調査の結果が出たと言っても、だんだんと「貯金を取り崩す」という言い方が使われなくなり、今後は「切り崩す」になっていくのだ、と言い切ることもできません。その点も注意が必要です。

「貯金を取り崩す」「貯金を切り崩す」については、『放送研究と調査』2010年8月号「ことば・言葉・コトバ」にくわしい説明があります。合わせてご覧ください。

メディア研究部・放送用語 山下洋子

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