シリーズ 戦争とラジオ〈第3回〉

踏みにじられた声

~「戦時ラジオ放送」への道~

公開:2018年8月1日

満州事変勃発の翌年、1932年5月、全国120万人のラジオ受信契約者の元に番組嗜好を問うアンケート用紙が配布された。差出人は逓信省電務局だった。

本稿は、このアンケート調査の自由記述欄に寄せられたラジオ放送に対する聴取者の希望に注目する。そこから浮かび上がるのは、少なからぬ聴取者が逓信当局による検閲が緩和されることを望み、事業経営については官僚化に反対していたことである。

この事実は2つの問いを生む。1つは、その出発から政府の管掌下にあり、満州事変後はほとんど軍・政府の宣伝機関となっていたラジオに対して、聴取者がなぜこのような希望をラジオに持ち得たのかという問いである。そしてもう1つは、そういう聴取者の声を逓信省と日本放送協会はどう受け止めたのかという問いである。

本稿は2つの問いの答えを探して、日本の放送の出発から太平洋戦争下の放送までを射程に、逓信省、日本放送協会、そして聴取者の関係を概観する。それは放送の公共性をめぐる議論を検証することに他ならない。

メディア研究部 大森淳郎

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