放送法第1条の制定過程とその後の解釈

放送の「不偏不党」を保障するのは誰か

公開:2016年6月1日

放送法第1条は、「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を掲げている。この規定は、公権力が放送の不偏不党性を保障するという原則を示したものだが、放送事業者に直接、不偏不党を義務付けた規定であるという誤解がしばしばなされているとの指摘がある。このため、本稿では、第1条の趣旨を明確にするため、放送法制定時の議論を振り返るとともに、その後の解釈の推移について、国会での議論を中心に検討を行った。

その結果、放送法の制定過程においては、第1条は公権力による放送事業への介入を防ぐ目的のもとで検討が進み、放送法施行後も事務当局(郵政省・総務省)の担当者や放送制度の専門家の間ではそうした解釈が定着してきたことが確認できた。一方で、国会での議論では、第1条に触れつつ、不偏不党が求められているのは放送事業者であるといった主張がなされることがしばしばあった。

これについては、放送法が番組準則(4条)で、放送事業者に対し、「政治的に公平であること」を求めていることから、それと第1条の目的規定が混同されてきたことが理由の一つとして考えられる。しかし、両者を区別せずに扱った場合、放送事業者の自律を基本とする放送法の理念が曖昧なものになる。放送制度全体の趣旨を明確にするためにも、放送の不偏不党や自律を保障する第1条の位置づけを再確認する必要があると考えられる。

メディア研究部 村上聖一

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