ラジオ90年【第5回】

GHQの番組指導と『婦人の時間』

~日本側はどのように対応したか~

公開:2016年1月1日

占領期、GHQは検閲や番組指導といった手段で放送に介入したが、メディア政策を進めていく上で特に重視した番組の一つが女性向けのラジオ番組『婦人の時間』だった。本稿では、戦後大幅に刷新された『婦人の時間』を例に、GHQがどのような番組指導を行い、日本側がそれにどう対応したか、検証した。

『婦人の時間』をめぐっては、GHQでメディア指導を担当するCIE(民間情報教育局)が当初、番組の演出に至るまで事細かに介入し、番組が定着したのちも、企画や出演者の決定など、根幹部分への関与を継続した。そして、こうした番組指導に対する日本側の立場は複雑だった。『婦人の時間』を担当した女性制作者の職場での立場は弱く、CIEの支援を得ながら番組制作を行った面がある。

しかし、日本側が番組指導をすべて受け入れたわけではなかった。CIEの指導の多くは命令ではなく、助言の形で行なわれた。このため、その建前を逆手にとって異議を申し立てることもあった。また、CIEも投書などを基に聴取者の実態を把握し、番組指導の軌道修正を図っていった。その結果、民主化教育番組として位置づけられた『婦人の時間』は、基本的な理念は維持しつつも、次第に内容は変化し、生活に身近な話題を提供する教養番組の性格を強めていくことになった。

このように『婦人の時間』は、CIEの一方的な番組指導によって内容が決定づけられていたわけではなかった。GHQのメディア政策の帰結を考える上では、助言という形式を通じて行なわれた番組指導の実態や、日本側の対応のあり方も考慮に入れる必要がある。

メディア研究部 村上聖一

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