ピョンチャン五輪,NHKと民放が放送やネットでさまざまなトライアル

韓国のピョンチャンで2月9日から25日まで開催された冬のオリンピックで,NHKや民放は放送やインターネット展開でさまざまなトライアルを行った。

NHKは,4K・8Kスーパーハイビジョンの試験放送で,フィギュアスケートなどを8Kで生中継した。また,OBS(オリンピック放送機構)が初めて国際信号として一部の競技で4K制作を行ったことから,国際信号を使った4Kの番組を放送した。

障害のある人も一緒に楽しめる「ユニバーサル放送」も,オリンピックで初めて実施した。2月18日と25日の番組『みんなで応援!ピョンチャン2018 オリンピック』では,聴覚障害者向けに会場の音声の情報を字幕で伝えたり,視覚障害者向けに詳細な試合内容の音声を追加したりして,競技の興奮を多様な形態で伝えた。また,一部競技の生中継では副音声で視覚障害者向けの実況を行った。

インターネットの放送同時配信実験では,地上波の放送を配信する「試験的提供A」を大会期間中,毎日午前9時から午前0時まで行い,一部は見逃し配信も行った。また,スーパーハイビジョン試験放送の一部を4K対応のハイブリッドキャスト受信機などに配信する「試験的提供C」を行った。

ライブや動画の配信では,OBSが提供した生中継映像のうち,NHKや民放が生放送しなかったり録画で放送したりした競技・種目のライブ配信を行った。また,すべての競技・種目の見逃し配信をしたほか,日本代表の活躍を中心にしたハイライト動画,競技結果などをコンパクトにまとめた「パック動画」も,ウェブサイトやアプリ,SNSなどで配信した。

さらに,日本国内の外国人に向けたサービスの実験として,英語のウェブサイトを開設し,競技結果の英語表示やOBS提供の英語実況のライブ配信を行った。

360°映像のVR配信も行った。一部の競技会場に設置された360°映像を撮影できるカメラの映像を配信するとともに,VR専用アプリでの配信も行い,より臨場感のある観戦体験を可能にした。

リュージュ女子1人乗りなど,生放送がなかった競技の一部では,「ロボット実況」をつけた映像の配信を初めて行った。これは,主催者から送られてくる競技データから自動で音声と字幕を生成し,リアルタイムで実況するというものであり,2020年の東京オリンピックやその先につながるこの新サービスにもチャレンジした。

一方,民放は地上波やBSの放送のほか,共同の公式動画サイト「gorin.jp」で競技のライブやハイライト動画などの配信を行い,見逃し配信サイト「TVer」などにも展開した。gorin.jpのライブ配信では初めて実況と解説つきの配信を一部の種目で行い,前回のソチオリンピックを大きく上回る約620時間のライブ配信を行った。また,過去のオリンピックのハイライト動画約4,000本を公開し,名場面を振り返ることができるようにした。

ピョンチャンオリンピックで日本代表は,冬の大会で最多の13個のメダルを獲得するなどの活躍を見せた。選手たちの活躍を伝えたNHK・民放とも,2020年の東京オリンピックも見据えて,よりさまざまな視聴形態に対応しようとしていることを印象づけた。

越智慎司

※NHKサイトを離れます