NHK,常時同時配信開始時の考え方示す

NHKは9月20日,総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」(以下,諸課題検)で,常時同時配信開始にあたっての基本的な考え方を説明した。NHKはこれまでも諸課題検で常時同時配信に向けた法改正を要望してきたが,今回の内容は,在京キー局や民放連,新聞協会の主張,総務省の高市早苗前大臣の"3要件"等,周辺の意向を大きく受けたものとなった。

まず常時同時配信の位置づけを「放送の補完」と明示。そして,これまで受信料支払い契約が確認できない場合,「視聴しうる環境」を作った人への「適切な負担」を求めるのが適当としてきたものを,「メッセージ付き画面などの視聴にとどめる」とし,負担には言及しなかった。さらに地域放送番組配信では「地域制限」を実施し,費用は「総額の上限」を定めるとした。

NHKの説明に対し,「検討会の議論を経てだいぶ理解しやすいものになってきた」(TBS),「こういう位置づけなら諸々の問題の解決を図る糸口がある」(日テレ)等,初めて在京キー局から一定の理解を示す発言がなされた。

今後,諸課題検の議論はどこに向かうのか。NHKは2019年度のサービス開始意向は変えておらず,それには放送法改正が必要である。また,9月中に示すとしていた会長の諮問機関の受信料制度等検討委員会の答申への見解も示していない。「放送だけではリーチできない人に番組を届けるのが公共放送の使命というのであれば,受信料制度との整合性の結論を出したうえで進むのが筋」(テレ朝)との発言は,NHKが目指す公共メディア像への問いでもある。これにNHKはどう答えていくのか。議論はこれからが正念場である。

村上圭子

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