韓国,拡声器による北朝鮮向け放送を再開

韓国政府は1月8日,北朝鮮が同月6日に4回目の核実験を行ったことへの対抗措置として,2015年8月以降中断していた北朝鮮向けの宣伝放送を再開した。

宣伝放送は南北の軍事境界線近くに設置した40個余りのスピーカーからなる,縦3メートル,横4メートルの装置を使って実施しており,昼は10キロ先まで,夜は24キロ先まで音声が届くとされる。放送の内容は,韓国の民主主義制度が北朝鮮の政治制度に優っているとするアピールや,キム・ジョンウン(金正恩)第一書記への批判のほか,韓国や海外のニュース,北朝鮮よりも精度が高い気象情報,それに韓国の歌謡曲などである。これについてパク・クネ(朴槿惠)大統領は,最前線の北朝鮮軍兵士に与える心理的影響は大きいとしている。

1962年に始まった拡声器による宣伝放送は,南北関係が比較的良好だったノ・ムヒョン(盧武鉉)政権下の2004年,双方の合意によりいったん終了している。しかし2015年8月,北朝鮮が非武装地帯に埋めた地雷が爆発して韓国軍兵士が大けがをしたことを契機に,韓国政府が11年ぶりに再開,同月中の南北会談の合意によって再度中止していた。

韓国の宣伝放送再開を受けて,北朝鮮も同様に宣伝放送を開始し,キム第一書記への賞賛や,韓国のパク大統領の名指し非難などを行っている。このほか,韓国やアメリカを非難する大量のビラを風船につけて散布するなど,対抗措置に乗り出しており,国際社会は朝鮮半島の緊張の高まりを懸念している。

田中則広

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