東日本大震災から10年

ー 関連テレビ報道の推移を検証する ー

公開:2022年2月1日

2011年3月11日に発生した東日本大震災から10年が経過したのを機に,この間の関連テレビ報道の推移を検証した。ただ,発災直後から3年間は報道量が膨大であること,すでに検証する論文がいくつか発表されていることから,発災から3年経過したあとの2014年4月から2021年3月の間を対象期間とし,2021年4月以降についても一部加えて分析した。また,これまでの検証の多くは,番組ジャンルや時期を限定してきたが,今回は,関連の報道(ニュースや情報番組だけでなく,バラエティー番組やトーク番組なども含む)をすべて対象とした。
「東日本大震災」関連報道は,毎年3月に集中する傾向がある。全体の報道量は徐々に減少しているが,10年目の2021年3月にはそれまで以上に多くの報道がなされた。キーワード別にみると,「震災・地震」に関わる報道が最も多く,次いで「原発・原子力」「復興」の順だったが,2017年4月以降は,「復興」に関する報道が「原発・原子力」を上回るようになった。番組ジャンル別にみると,「ニュース」「情報番組,ワイドショー」の両ジャンルで全体の6,7割を占めるが,2020年4月〜2021年3月では,「ドキュメンタリー」の比率がこれまでより高くなっていた。これは,この期間に特にNHKで多くのドキュメンタリー番組が放送されたことによる。
関連番組の中での被災地からの中継は減少する傾向がみられていたが,10年の節目の3月報道では,多くの番組が中継を行った。番組の中では,被災地の状況を伝えるだけでなく,将来の災害に備えて「防災」や「教訓」といった言葉を含む番組が,特に2021年3月に大きく増えた。
2020年1月からの「新型コロナウイルス」感染拡大により,「東日本大震災」という語を含む報道も,「新型コロナウイルス」の状況を語る中で比較対象として言及されるケースが多くなり,「東日本大震災」そのものを対象にした報道は減少する傾向がみられた。

メディア研究者(元NHK放送文化研究所) 原 由美子

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