コロナ禍前後の中学・高校生の追跡調査にみる家庭におけるデジタル学習とその可能性

公開:2022年2月1日

新型コロナウイルスの感染拡大は教育の分野にも変化をもたらした。児童・生徒に1人1台の学習端末を配付するなど「GIGAスクール構想」が進展し,2020年春の学校の臨時休業期間には,家庭に向けてオンライン授業の配信も行われた。本稿では,デジタルメディアを利用した,家庭における「デジタル学習」に注目して,コロナ禍をはさんで2019年と2020年に同一の中学生・高校生とその母親に行った追跡調査(ウェブ調査とデプスインタビュー調査,2019年調査は全員が中学生)の結果から,デジタル学習の変化や勉強へのやる気など学業面の変化を捉え,家庭におけるデジタル学習の可能性を考える。
2つの時点を比べると,家庭でデジタル学習を行っている割合は増加し,機器ではスマートフォンの利用が最も多かった。教材は,教科書など紙媒体を大半が利用する傾向は継続していたが,学習用のアプリ・ウェブサイトなど,デジタルコンテンツの利用も増えた。デジタル学習が進んだ要因として,家庭で自由に利用できる機器の所有者が増えて機器を利用しやすくなったこと,臨時休業期間に,学校からの課題であるオンライン学習やオンライン授業で勉強したことが挙げられる。
家庭学習を継続していた者をデジタル学習の状況で比較すると,デジタル学習を継続していた「デジタル群」,デジタル学習を行うようになった「デジタル化群」,デジタル学習をやめた「非デジタル化群」,継続してデジタル学習を行っていない「非デジタル群」の4群に分けることができる。これらの群間には,デジタル学習をどのように評価しているかという中高生の意識の違いや,家庭に機器利用のルールが根づき母親がその利用を推奨しているかという環境の違いがみられた。学校の成績では4群に有意な差はみられなかったが,学業面では,デジタル群は非デジタル群より勉強に根気強く取り組み,やる気も高かった。非デジタル群と,デジタル学習に変わったデジタル化群との学業面の差が小さかったことから,デジタル学習が実を結ぶには,デジタル機器の学習利用に慣れるための時間が必要だと考えられる。
臨時休業期間の家庭学習に注目すると,学校からのオンライン授業の配信は中学生よりも高校生のほうが多く,英語,数学などの主要5教科が中心だった。オンライン授業の課題とし,中高生からは,教師と生徒,生徒同士のやり取りの双方向性の確保が,母親からは,学習の理解度がわかりづらいことや視力の低下など健康面の不安が多く挙がった。同期間のオンライン学習では,多くの学校でウェブサイトのNHK for SchoolなどNHKのコンテンツの利用が推奨された。家庭学習におけるNHK for Schoolの利用経験者の割合は大きく伸び,学校ばかりでなく家庭での利用の可能性が示された。
今後,学校で利用している1人1台の端末を家庭に持ち帰り家庭学習にも利用するようになると,学校と家庭の学習の一層の連動が期待できる半面,そのためには,家庭のデジタル環境の格差の解消や,子どもと親や教師が話し合いながらそれぞれに納得したうえで機器の利用ルール作りを進めることも欠かせない。紙の教科書に替わる学習者用デジタル教科書の導入の動きなども踏まえながら,家庭におけるデジタル学習の変化やその効果検証に関わる研究を継続的に行うことが求められる。

メディア研究部 渡辺誓司
東京都立大学 人文社会学部 酒井 厚

※NHKサイトを離れます

全文を見る PDF(4,822KB)

英文サマリー