NHK幼児向けテレビ番組の変遷

―『おかあさんといっしょ』から広がった在宅向け幼児番組群―

公開:2020年1月30日

1959年、幼児向けテレビ番組『おかあさんといっしょ』は総合テレビで放送を開始した。NHKの幼児向け番組は、3年前の1956年に“学校放送”の一環として、「幼稚園保育所向け番組」が既に始まっていたが、“家庭での親子視聴”を想定し、よりエンターテイメント性を重視して開発されたのが『おかあさんといっしょ』だった。
開始当初の『おかあさんといっしょ』は「子どもに最高のものを見せる」という制作哲学を掲げ、当時さまざまな分野で活躍していた外部クリエーターを数多く招き入れ、番組の土台を形成していった。1979年には、視聴ターゲットである幼児の実態を専門家とともに調査研究する共同プロジェクトを立ち上げ、実証的なデータに基づいて新たなコーナーを数多く開発していった。また、そこで得られた研究成果は以後の幼児番組の制作に生かされていった。1990年以降、イベントなどの二次展開が活発化し、放送番組以外にもさまざまな形で視聴者のニーズに応える体制を整えていった。これらの取り組みの積み重ねが、幼児に“最もよく見られる番組”という近年の評価につながっていると推測される。
1990年には、教育テレビで子ども向け番組を集めて編成する『母と子のテレビタイム』ゾーンが教育テレビで新設され、『英語であそぼ』や『いないいないばあっ!』など、それまでになかったテーマの番組が次々と開発されるようになった。これらの新たな在宅向け幼児番組群が発展できたのは、先行番組『おかあさんといっしょ』がさまざまな知見や制作ノウハウを蓄積してきたことによっている。『母と子のテレビタイム』の番組群は徐々に数を増やしながら、視聴者の間に定着していった。その背景には、従来把握されていなかった幼児の視聴状況を把握することでターゲットの動向を捉え、ゾーン編成に反映させるという戦略があった。
『おかあさんといっしょ』の放送開始から60年が経過した現在、NHKの在宅向け幼児番組は多様化した。また、子どもだけでなく、大人も視聴する番組が現れ、幅広い視聴者層を獲得するようになったことで、新たな役割を担うようになっている。

メディア研究部 高橋浩一郎

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