3.11はいかに語り継がれるか

-東日本大震災後7年・テレビ報道の検証-

公開:2019年1月30日

2011年3月11日の東日本大震災発生からまもなく8年。NHK放送文化研究所では,発災当初から関連番組と,その放送内容の詳細を記録したメタデータを収集し,報道時間量や内容の推移を分析して継続的に研究成果を発表してきた。本稿では,震災関連報道が3月11日を中心とする1週間に集中していることに着眼し,2012年から2018年までの7年間における3月の震災関連報道について,分析対象を,3月11日を中心とする1週間,3月11日,発災時である午後2時46分を含む特集番組へと絞り込んで,メタデータ分析や番組視聴によってさまざまな角度から検証を行った。第Ⅱ章「3月11日を中心とした1週間の報道分析」では,報道量の経年推移,出現した名詞や動詞の推移をもとに,震災報道で何が語られたのかを追った。被災した岩手・宮城・福島の3県では,岩手・宮城については,復興は徐々にではあるが進捗している様子が伝えられるが,報道量の減少が顕著であった。言及される自治体も石巻市や陸前高田市など一部に偏る傾向がみられた。道路や堤防などハード面での復興は進んだが,収入の安定や心のケアなどソフト面での復興が課題としてフォーカスされるようになった。一方,福島では,原発事故の影響による二次的被害が多発し,7年を経ても報道量の減少が抑えられており,紹介される県内の自治体の数も多かった。第Ⅲ章「3月11日の番組」では,この日の中継が被災地のどの場所から,何を映し出したのかなど,放送番組の映像を検証した。また,午後2時46分の黙とうシーン,特設番組のラストコメントなどに注目し,この7年での内容の変化を読み解いた。そこからは,中継される市町には震災を象徴する事物が存在していることが多いことが明らかになったほか,ある種のパターン化も見て取れた。また,当初は被災地の状況などを伝える内容が中心であったが,徐々に次の災害に備えるものへと,報道の比重が移っていくのが確認された。第Ⅳ章「まとめと考察」においては,検証を総括するとともに,今後の分析作業に向けた課題を抽出した。

メディア研究部/原 由美子・大髙 崇

※NHKサイトを離れます

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