2011年3月11日に発生した東日本大震災から7年が経過した。当時NHKは最大の態勢で震災報道に取り組み、東北の各放送局や震災報道に関わった職員の手元には、取材メモや写真、被災者から寄せられた要望・意見など多くの資料が残されていた。これらの資料は、未曾有の大災害の報道の背景を伝える貴重な「記録」であり、「記憶」でもある。
NHKでは2015年秋に組織横断的な「震災報道アーカイブ構想」を立ち上げ、日々の取材・放送業務の中でともすれば散逸・廃棄されがちな資料の収集に取り組んだ。集まった162件の資料は専門のアーキビストによって整理・体系化された。
その一部を2017年3月から9月までNHK放送博物館(東京・港区)の特別展「東日本大震災~伝えつづけるために~」で一般に公開した。会場で実施したアンケートでは「東日本大震災発生時の映像」「被災地の写真と記者・カメラマンの手記」などが来場者の関心を集め、展示の恒久化や全国展開などを望む声も寄せられた。
大規模災害に関する取材・放送の記録を収集・整理・公開する取り組みは、NHKでも過去に例がない。本稿は、震災報道に関する資料の収集・アーカイブ化から展示に至る一連の取り組みを総括し、これらの資料の活用についても展望するものである。