東日本大震災から5年
テレビ番組は何を伝えてきたか

―夜のキャスターニュース番組とドキュメンタリー番組―

公開:2017年1月30日

2016年3月,東日本大震災の発生から5年の節目を迎えた。この5年間に,テレビがこの震災についてどのような報道をしてきたかを検証するため,各局夜間のキャスターニュース番組と,ドキュメンタリー番組について,関連報道・番組の分析を行った。

夜のキャスターニュース番組では,毎年3月の節目の月の報道量は多いものの,その他の月では年を追うごとに報道量が減少していることが確かめられた。とくに民放の番組の減少ぶりが目立った。「震災」関連のニュースの報道内容(語彙)にはあまり大きな変化がみられないが,「原発」関連ニュースでは,福島第一原発事故関連やそれに伴う放射能汚染に関するニュースは減少する一方,再稼働に関わる問題が伝えられるようになった。当初議論の焦点となった「エネルギー問題」や「原発政策」に関わる問題は,2012年以降,あまり伝えられていない。

ドキュメンタリー番組は,すでに初期3年間の傾向を分析したので,本稿では続く2年間の番組について調べた。番組数は,初期3年間に比べると大幅に減少した。とくに民放では番組数が激減している。ここでも3月には比較的多くの番組が放送されていた。「復興」を扱った番組では,明るい側面も描かれるようになっているが,「原発」を扱った番組では,厳しい状況が続いている様子が描かれていることがうかがえた。

ドキュメンタリー番組については,石巻市と南相馬市を主な舞台とした番組の事例研究を行った。石巻市の番組では,石巻市が被災地の代表地として扱われることが多いこと,犠牲者の遺族が描かれる傾向があること,「復活」や「再建」への願いが込められたコメントがみられることなどが特徴であった。南相馬市の番組では,多くの番組が,ふるさとへの帰還をめぐる葛藤をテーマにしていた。

キャスターニュース番組にもドキュメンタリー番組にも,大幅な報道量の減少と3月への集中という傾向がみられた。5年の節目を越えた後,どのように推移するのか,検証を続ける必要があるだろう。

メディア研究部 原由美子

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