8Kスーパーハイビジョンの防災活用の可能性

公開:2017年1月1日

2016年8月1日、スーパーハイビジョンの試験放送が始まった。超高精細映像を、放送だけでなく公共放送の使命の一つである防災分野で活かすことは重要な課題である。NHKは熊本地震の直後に大きな被害が生じた活断層に沿って8Kで空撮を行った。その映像を活断層の専門家に分析してもらったところ、地震後の調査で未発見だった地震断層や亀裂が多数見つかり、その成果がNHKスペシャル「活断層の村の苦闘~熊本地震・半年間の記録~」で放送された。8Kによる災害分析を災害報道、番組制作に活用した初の事例である。本稿では、リモートセンシングや空間情報、災害研究の視点から8Kが防災に有効であることを明らかにした。8K空撮映像は、高度400mから数センチの亀裂も発見でき、空中写真よりも「解像度が高く」、ドローンより「画角が広い」。亀裂は様々な災害の芽である。防災活用が期待される。一人ひとりの「動き」が見えるため、人命救助や捜索、車中泊・自主避難所の検出に有効。「斜め撮影」であるため高さ方向の情報が得られ、建物の倒壊状況などが把握でき、画像データから「立体モデル」「災害支援地図」を作ることができる。メディアだけでは分析しきれない情報を含む映像をどう使うのか。災害報道では、犠牲者の姿も映し出す可能性もあり、今後「技術開発」とともに「放送文化的検討」も必要である。

メディア研究部 山口 勝

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