安全保障関連法案 テレビ報道の分析

公開:2016年10月1日

2015年9月、安全保障関連法案が可決・成立した。この法案については、各局のニュース番組の多くが、戦後の日本の安全保障政策の大転換と位置付け、多くの時間を割いて報道した。番組研究グループでは、この法案の内容や国会での審議の様子、国民の反応などについて、テレビがどのように伝えたかを分析した。国会審議が始まった5月から、参議院で可決した9月まで、各月1日を選び、その日の、NHKと在京キー局で夕方から夜にかけて放送される13のニュース番組の関連報道を対象とした。これらの分析から、法案の形態や論点について、事物の提示や演出の工夫でわかりやすく伝える努力がされ、法案の背景や周辺に迫る独自の企画や取材も行われていたことがわかった。その一方で、目を引く映像の多用や画面の複雑化、感情に訴える演出などが見出され、さらに議論の総括や検証よりも現時点で起こっていることや今後の展開についての解説に関心が向く傾向が見られた。結果として論点が拡散し、国民の理解が進まなかったことについて、報道の役割も含めて自省的に総括した番組も少なかった。さらに分析については、「何が」だけでなく「どのように」伝えたかを質的に分析する手法の開発や分析事例の蓄積が今後の課題として浮かんだ。

メディア研究部 原由美子/古閑忠通/植村充博*/堀川伸一/七沢潔
*現在は日本国際放送 第1制作部所属

※NHKサイトを離れます

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