堤防決壊と緊急時コミュニケーション

~越水破堤の危険性は伝わっていたか~

公開:2016年2月1日

2015年9月10日、茨城県常総市を流れる鬼怒川は堤防が決壊し、氾濫した。堤防を乗り越えた濁流が土手をえぐり崩す「越水破壊」が起きた。近年は、豪雨により大河川でもしばしば越水による堤防決壊が起きている。本稿では、越水による堤防決壊への危機感が自治体やメディア、住民の間で共有されていたのか、決壊発生の第1報がメディアで迅速に伝えられたかどうかを検証し、情報伝達の課題を考察した。調査の結果は以下の通りである。

■氾濫の前や氾濫初期の段階では、越水による堤防決壊のおそれは、共有されていなかった。指定河川の洪水予報や自治体の避難情報で越水による決壊の危険性が強調されていなかった。上流域で記録的な大雨が降り続けている場合には、氾濫の前から越水による決壊の危険性を住民に周知し、避難を促す必要がある。

■堤防決壊の50分前には越水による破壊のプロセスが始まったことが目撃されたが、自治体やメディア、住民に伝わっていなかった。河川巡視員や水防団員による現場の情報が生かされ、確実に周知される仕組みが必要である。

■堤防決壊の発生がメディアで迅速に伝えられたとは言い難い。決壊発生の確認後に発表された「はん濫発生情報」の見出しと主文には、「堤防決壊」という言葉はなかった。発表文の見直しも含め、メディアによる決壊発生の第1報をより迅速なものとすることも課題である。

メディア研究部 福長秀彦

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