放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    英BBC,歌手クリフ・リチャード氏との裁判で上訴断念

    イギリスの歌手クリフ・リチャード氏が性的虐待の容疑で警察の家宅捜索を受ける様子をBBCが中継で報道したのはプライバシーの侵害にあたるとして,2018年7月にBBCが敗訴した裁判で,BBCは8月15日,上訴しないと発表した。BBCは,クリフ・リチャード氏の苦しみを長引かせ,高額の裁判費用がかかるにもかかわらず,判決が覆る可能性が低いためとしている。しかし一方で,7月の判決で,裁判官が容疑者の実名報道を制限したのは間違いだとして,BBCは,政府に対して刑事事件を適正かつ公正に報道する自由が守られるよう法整備を求めた。

    英労働党党首,Amazonらにデジタル受信料を主張

    イギリスの野党労働党のジェレミー・コービン党首は8月23日,エジンバラ国際フェスティバルで講演し,公共放送BBCの編集上・財源上の政府からの独立性を高める仕組みとして,AmazonやNetflix,Facebookといったアメリカのグローバル企業やインターネット・プロバイダーに対し新たに「デジタル受信料」を課すことを提案し,注目を集めた。

    仏政府,若者のニュース利用調査の結果を発表

    フランス文化省のメディア・文化産業振興局は,民間の調査会社,メディアメトリに委託した,若者によるニュース視聴の実態調査の結果を8月21日に発表した。それによると,15〜34歳の若い世代の9割近い89.9%がスマートフォンを所有していて,このうちの69%がニュース視聴の第一のデバイスとしてスマートフォンを利用していることが明らかになった。また,この世代の71%がニュース参照の第一の手段としてSNSを利用している。さらにこの世代の15%は自らを「ニュース中毒」と認めていることなども明らかになった。

    独公共放送,別荘の放送負担金免除を開始

    ドイツの公共放送ARD,ZDF,ドイチュラントラジオが共同で運営する放送負担金の徴収機関「負担金サービス」は8月16日,別荘に対する放送負担金の免除申請の受け付けを開始した。免除は7月18日までさかのぼって申請できる。ドイツの公共放送の財源となる放送負担金は,住居ごとに徴収される仕組みで,これまで別荘の所有者は自宅と別荘の2軒分の支払いを求められていた。しかし連邦憲法裁判所は7月18日,公共放送のサービスは同時に1か所でしか利用できないにもかかわらず,2軒分の徴収をすることは不平等で違憲であるとの判決を下し,16州に法改正をするよう求めると同時に,改正を待たず,判決の日から別荘の免除手続きを可能にするよう公共放送に求めていた。

    伊政府,700MHz帯開放とDVB-T2への移行計画を発表

    イタリアの放送と通信を所管する経済発展省は8月10日,第5世代移動通信システム(5G)の導入に向け,700MHz帯の周波数開放と地上デジタル放送の新規格であるDVB-T2/MPEG4方式への移行計画を発表した。計画では全国を4つの地域に分け,現在,一部を放送事業者が使用している700MHz帯を2020年1月から順次開放させ,2021年9月から新周波数計画(PNAF2018)に従った周波数の再編を行い,現行のDVB-T/MPEG2方式での放送は2022年6月30日をもって全国で終了する。新放送方式への移行に対しては,低所得世帯などを対象に2019~22年の4年間で1世帯最大50ユーロの助成が行われる予定。財源は,今秋から開始予定の5G周波数の入札による収入が充てられる。

    スイス連邦政府,SRG SSRの免許改定

    スイス連邦政府は8月29日,公共放送SRG SSRに2019年以降4年間の免許を交付した。新免許には,メディア環境の変化を考慮しつつ,SRG SSRの公共サービスとしての性格を強化するための規定が盛り込まれた。具体的には,受信料収入の半分以上を報道番組の制作に使用すること,特に娯楽番組は商業放送との違いを明確にすること,若い世代の社会参加に貢献するよう,若い世代の生活状況や関心に即したコンテンツを提供すること,各言語圏の報道番組で他の言語圏のニュースも取り入れること,地上デジタル放送は利用者が少ないためこれを2019年末までに終了すること,スポーツ放送権の獲得の際にスイスの商業メディアと協力すること,などである。