放送界の動き

各国の「放送界の動き」に関する情報を掲載しています。

    韓国,KBSストが長期化の様相

    韓国の公共放送KBSでは,公共放送への政治介入に反対して社長の退陣などを求める労組が9月4日から全面的なストに突入したが,10月1日現在,経営側は譲歩しておらず,ストは長期化の様相を見せている。この問題は,韓国のパク・クネ(朴槿惠)前政権時代にKBSの放送に当局が政治介入したと問題視する労組が,前政権時代に任命されたコ・デヨン(高大栄)社長の退陣や理事会の解体を要求しているものである。9月20日に行われた,スト開始後最初の理事会では,イ・インホ(李仁浩)理事長がストの原因や今後の執行部の対応について意見を求めた際,コ社長は「私はストの原因を提供したことはない。ストに入ってからも一部の番組を除いて通常通り放送されている」などと答え,辞任の意向は示さなかった。

    韓国政府,MBC社長らを不当労働行為の疑いで書類送検

    韓国政府の雇用労働部は9月28日,MBCのキム・ジャンギョム(金張謙)社長ら現職と前職の幹部合わせて6人について,不当労働行為の疑いで起訴すべきとの意見をつけたうえで書類送検した。雇用労働部では6月末から7月中旬にかけてMBCへの特別調査を実施したが,その結果,キム社長ら6人が,2012年のストに参加した言論労組MBC本部の組合員に対し,人事上の不利益を与えたり,労働組合からの脱退を働きかけたりした疑いなどが明らかになったという。これに対しMBCの会社側は声明を出して,国策調査だと反発しているが,10月1日現在,KBSと同様に組合側が全面的なストを継続しているMBCの労使紛争にどのような影響を与えるかが注目される。

    台湾,文化部長が「公共メディア法」制定の方針

    台湾でメディア政策を管轄する文化部の鄭麗君部長は,9月25日付の大手紙自由時報のインタビューで,放送・通信の融合という時代の流れに合わせて,現在の公共テレビ法に代えて公共メディア法を制定する方針を示した。台湾では,1998年に初の公共放送として公共テレビが開局したあと,公共化された中華テレビやテレビ国際放送の宏観チャンネルなどが順次,公共テレビを中心とする公共放送グループに加入したが,これを法的に裏づける公共テレビ法の改正には長年,手がつけられていなかった。鄭部長はインタビューの中で,公共メディア法制定にあたって,政府系メディアである中央通信社やラジオ国際放送の中央ラジオも公共放送グループに加える方針を示した。

    オーストラリアでメディア改革法案が可決

    オーストラリア議会は,2006年修正放送サービス法(Broadcasting Services Amendment Act 2006)で規制緩和をして以来の大改革となるメディア改革法案(Broadcasting Legislation Amendment 2017)を9月14日に可決した。広告収入の減少,海外OTT事業者の参入による無料放送の視聴者減などに苦しむ国内メディア企業の存続確保のため,政府は地域ジャーナリズムへの支援,放送免許料廃止などを法案に盛り込む一方,1つの市場で新聞,ラジオ,テレビ局3つ全ての所有が可能となるようにルールを改正して規制緩和をさらに進めようとしている。

    カンボジアのメディア環境悪化で米RFA支局閉鎖

    アメリカの国際放送,ラジオ・フリー・アジア(RFA)は9月12日,カンボジアで報道機関としての使命が達成できなくなったとして,首都プノンペンの支局を閉鎖すると発表した。2018年に下院の選挙が行われるカンボジアでは,フン・セン政権によるメディアや野党への弾圧が強まっていて,8月にRFAやボイス・オブ・アメリカ(VOA)などに放送時間枠を提供していた19の独立系ラジオ局が閉鎖され,RFAやその支局スタッフへの脅迫もあった。

    ミャンマー,「ビルマ民主の声」も地上波参入へ

    ミャンマーの無料地上デジタル放送で,軍政時代に海外で民主化を主張する放送をしていた「ビルマ民主の声」を含む民間事業者5社が新チャンネルの免許を取得し,放送インフラを管轄する国営放送MRTVと10月に正式調印することになった。5社は情報省の新チャンネル計画に応募した29社から選ばれていて,制作や編成は独自に行い,MRTVのインフラを使って放送を行う。